明日、もし晴れたら君と海に行こう。
山でもいいな。川でもいい。動物園でもいいし公園でボートに乗るってのもいいかもしれない。
なんでもいい。青空の下で笑っている君を見られたら。
少し猫背の背中と並んで歩けたらそれでいいんだ。
白い肌も少しは焼けるかもね。
手を繋いだら私がどこへでも連れてってあげる。
▷明日、もし晴れたら
波の音に耳を澄ます。
ザザンザザンと心地よい音に混じっているのは微かなメロディ。
それに合わせてラララと歌った。
この音色は海の向こうから送られたラブレターか。
天からの慈しみか。
それとも、ここではないどこか異国からの嘆きかもしれない。
僕はここで歌うことしかできない。
誰かの幸せを願って。
安らかな眠りを祈って。
ここで静かにラララと歌う。
▷ここではないどこか
1年後、多分また梅雨はやってきて、僕は蒸し暑い夜を過ごしている。
君は「眠れないね」と言いながら隣でごろごろと寝返りを打つ。
雨の音を聴いてため息をつくような、そんな馬鹿みたいに単純な時間を過ごしていたらいい。
1年後、ふたりで答え合わせしよう。
▷1年後
あなたがいたからここまで生きてきた。
あなたがいない今、どうやって生きていけばいいかわからない。
お気に入りのカーディガンも、買ったばかりのマニキュアも、毎日使っているお箸も、どこかへ行ってしまった。
あなたが隠してしまったの?
そちらの世界も寂しいのかな。
あなたがいなくなってから私は探し物ばかりしているよ。
▷あなたがいたから
朝からツイてない。
悪夢にうなされ半泣きで起きたし、コンタクトつけようとしたら洗面台に落としたし、食パンは焦がしたし、星座占いは最下位だったし、電車は遅延しているし。
「おはよ」
乗り換え途中、後ろから声をかけられた。
振り向かなくても誰かなんてすぐわかってしまうから余計に厄介だ。
ああもう最悪。
「一緒に行こうよ」
今日はアイラインよれてるし、髪もうまく巻けていないし、顔も浮腫み気味なのに。
それに、この格好変じゃないかな。
汗くさくないかな。
的外れな会話になってないかな。
ああもう最悪だ、最高で最悪だ。
▷最悪