飛び出した腕を毛布にそっとしまう。
目にかかった前髪をそっとはらう。
すべすべのほっぺにそっとキスをする。
ふと目が覚めた明け方にそっと感じる幸せ。
早く大きくなってほしいような。
このままでいてほしいような。
そんなわがままを許してね。
愛おしい匂いをそっと吸い込んだ。
▷そっと
あたたかなリビングから一歩踏み出すと異様に冷たいフローリング。
外かと思うほどに温度の下がった廊下を、つま先立ちでぴょいっと駆け抜けた。
エアコンの効いた寝室はぼわんとあたたかくて、でもベッドに入ると布団はひんやりしていて。
交互にやってくる寒さとあたたかさは、あなたが来てしまえば全て解決。
待ちかねた体温が隣に横たわれば冷たい足を押しつける。
小さな悲鳴に口元が緩んだ。
いつもごめんね。
いつもありがとう。
私は冬がだいすきだ。
▷あたたかいね
自分には何が向いているんだろう。
不器用でコミュ障で頭も大して良くはない。
でも何かがあると信じていたいんだ。
自分の居場所が、ここではないどこかにあると。
砂漠の中で小さな一欠片を探すような行為かもしれない。
でもキラキラ光るそれを、夢見ていたいんだ。
空から落ちる僕だけの星のかけら。
なんなら君がそこから落としてくれよ。
▷星のかけら
風が吹いている。
前へ進め。
頬に当たる髪の毛がくすぐったい。
でもこのままでいい。
風の行方を見据えて走り出す。
僕の未来は今が一番輝いている。
▷追い風
はやく雪が降るといいね、ときみが笑う。
嫌だよ寒いから、とぼくは答えた。
そんな後ろ向きなぼくのことなんか無視して「雪だるま作ろう」って有名なアニメ映画の歌を口ずさむもんだから笑ってしまった。
ほんの先の未来、不恰好な雪だるまをベランダに並べる姿が目に浮かぶ。
きみがいるとあったかいね。
寒がりなぼくにはやっぱりきみが必要みたいだ。
▷冬は一緒に