初めて知った感情。
この時間が愛おしいのにどうしようもなく怖いんだ。
終わりが訪れる未来を想像しては震えるように寒くなるから。
決して信じていないわけじゃない。
君から贈られる言葉に嘘はないと思っている。
撫でてくれる手のひらからはあたたかい愛を感じている。
でもね、だって、どうしても。
君と出逢ってから、私は臆病になった。
▷君と出逢ってから、私は・・・
大の字になって原っぱに寝転んだ。
夏にも似た五月の暑さ。
背中に当たる草は熱を持ち、その下の土はひんやりと気持ちいい。
気まぐれな雲が風に運ばれていくのをしばらく眺める。
まるで広い空を独り占めしているみたいだと思った。
目を閉じればその先が透けて宇宙が見えるよう。
そこから見た私という存在。
取るに足らない小さき存在。
そんな豆粒みたいな私の、胸の奥にある苦しみなんてそれこそないに等しいもの。
じゃあもういいじゃないか。
泣くのはやめにしよう。
起き上がりまっすぐに前を見据える。
風が舞い踊りながら導く先へ私は歩き出した。
▷大地に寝転び雲が流れる・・・目を閉じると浮かんできたのはどんなお話?
思い出したくない人がいる。
先日亡くなった最愛の母だ。
思い出すたびに涙が出て立ち止まってしまうから、できるだけ違うことを考えて今も生きている。
もちろん忘れようとしているわけじゃない。
いい加減に扱おうとしているわけでもない。
ただ向き合えていないだけ。
現実から逃げているだけ。
あなたのいない世界でどうやって生きていけばいいのだろう。
そんな思いがいまだ色褪せず、この胸にあるから。
ありがとう。
伝えたかった言葉はちゃんと聞こえていたのかな。
あぁやっぱり考えたくないよ。
ごめんね。
ありがとうとごめんねはまだ紙一重だ。
いつかありがとうだけを伝えられるように、生きていく。
生きていくよ。
▷「ありがとう」そんな言葉を伝えたかった。その人のことを思い浮かべて、言葉を綴ってみて。
優しくしないで。
あなたがいないと生きていけないなんて、そんな弱い人間になりたくない。
悲しいこと。
辛いこと。
やるせないこと。
耐えられないこと。
何かあるたびにあなたの顔を思い出してしまう。
抱きしめて頭を撫でて「大丈夫だよ」と囁いてほしくなる。
こんな私を作ったあなたが憎い。
▷優しくしないで
ころんとしたカラフルな金平糖。
ひとつつまんで口に放ってやるとあなたは笑った。
「甘いね」
少しの間舌で転がしてカリッと噛む。
広がる砂糖味。
口の端にうつされた甘さ。
「知ってる?金平糖って『永遠の愛』っていう意味があるらしいよ」
そうか、これが永遠の愛の味、とやけに納得した。
▷カラフル