私はバカじゃない
私は小学校に上がる前からサンタさんが居ないことに気がついた。
私は賢い
私はテストで90点以下を取ったことがない。
私は感がいい
頭の中がボヤけた時、必ず嫌なことが起きる。
そして今も、私の頭の中はボヤけている。
だから、今私の目の前に転がっているこの赤くて鉄くさい置物が私の友人の忘れ物だと分かってしまった。
私の制服は友人の忘れ物によって所々赤く染まってしまっている。
ボヤけている頭の中に音が響く。
人の喋る声、踏切の音、鳥が羽ばたく音
その音を聞きながら、私はこの忘れ物をどうやって友人に届けるかを考えた。
まったく友人には困ったものだ。
こんなに大きな忘れ物、どうやって届けろというのか。
いっその事燃やしてしまおう。
その方がきっと友人も喜ぶだろう。
しかし、昔からどこか抜けているとはおもっていたがまさかここまでとは思いもしなかった。
いつも成績優秀な友人は、どうやら私より頭が悪かったようだ。
「バカみたい。」
私はそう言って、重たい瞼を閉じた。
夜に星を見ると何故か心が冷たくなる。
寂しいなどの暗い感情ではなく、怒りを忘れて冷静になった時のような冷たさだ。
私は今日の朝、母親と喧嘩をしてしまった。
理由はしょうもないものだが、その怒りは今も収まらない。
きっとこのまま母親と顔をあわせると、また喧嘩してしまうだろう。
しかし、それは避けなければならないと思い、私は外に出た。
季節はもう冬で、外に出ると冷たい空気で身体がわずかに震えるのは、人間が寒さに弱いからだろうと、くだらない事を考えながら私は空を見上げた。
私の住んでいる場所は他県の人からすると田舎に分類されるし、実際に住んでいる私もここが田舎だと認識している。
不便なところもあるかもしれないが、私達はその不便な生活に慣れているのだからそれを不便とは思わず、むしろ当たり前だと認識している。
それに、学校帰りやバイト帰りに見る夜空は私の心を癒してくれる大切な存在で、例え空が曇っていてもそれは変わらない。
天気予報では今日の夜は晴れだった。
しかし私の顔は湿っている。どうやら母との喧嘩が予想以上に心にきていたらしい。
私の将来の夢はイラストレーター、しかし母親は医者になれと言ってくるのだ私は一体どうすればよいのだろう。
頬を伝う涙には今日の星が浮かんでいる。
嗚呼、星が溢れて止まらない。