月夜
広い和室の真ん中で
襖の隙間から差し込む月の光に見惚れていた。
そして、周り廊下の冷たさを足の裏で感じながら
雪のように、触れたら溶けてなくなってしまいそうな月を見て、貴方を思い浮かべます。
庭の池には1枚の桜の花びらが浮かんでいる。
私にとって、貴方は桜。
いつか私に春が来たことを、知らせにきてください。
絆
君と誰かがかたい絆で結ばれているのだと気付いたときには、気付いてしまったときには
君はもう、私の前にはいない。
たまには
人生も
たまには足を止めて休んだって良いんじゃない?
時には止まりながら、少しずつ歩いていこう。
大好きな君に
私にもほしかったな
大好きだと思える人。
大好きな君にしか渡したくないもの
買ってみたかったな。
たった1つの希望
「ちょっと待って」
と叫んだ。
たった1つの言葉だけで
美月をとめられたら、どれほど楽なことか。
「悪いけど、私の意思はかたいから。当たり前のことだけど、死ねば……もう生きなくて良いんでしょう?」
いつから、こうなってしまったのだろうか。
どうして私は美月の気持ちに気付けなかった。
こんなに情けない私が言えることでもなかったが、沈黙に耐えきれなくなった私は、もう構わず本音を話してしまおうと思った。
「生きたくないという理由だけで死なないで。死ぬことを甘く見ている人間に死ぬ資格はない。それくらい、命は失くしてはならないものなんだよ。」
「……分かってるよ。でも、優奈は私の何を知ってる?夜になる度自己嫌悪に陥るせいで毎晩眠れなくて、寝不足の日々が続いた。それでも毎日学校に行って、家に帰ったら親に勉強しろとかちゃんとご飯食べろとか言われて。もう、しんどかったんだよ。何回死のうと思ったと思う?優奈には分からないよね。私のこういう部分を見て見ぬふりしてきたんだから。何も見てこなかったんだから。」
「でも私ね、優奈に会えたおかげで、ちょっとだけ生きようと思えたの。それも、本当のこと。」
美月の優しい声を聞いていると頭が痛くなってくる。
私は美月の肩を思いっきり掴んだ。
「そんなに死にたいなら、さっさと死のう。」
「は……?とめてきたのは優奈でしょう」
「そっか。美月こそ、私の気持ちに気付いてなかったんだね。私さ、美月のこと好きだったんだよ。ずっと前から。だから1人で飛ぼうとしてる美月をとめた。」
これが、この結末こそが、大好きな美月とたった2人だけの世界で生きられる、たった1つの希望だったから。
放課後の、冷たい風の吹く屋上で
私は、自分の身体を美月の肩に思いっきりぶつけた。