#23 些細なことでも
「そんな些細なこと気にするなよ」
今日、彼と喧嘩をした。
きっかけは彼がトイレの蓋を
しめなかったことから始まった。
なんで前から言ってるのに閉めてくれないんだろう。
彼にはそういうところがある。
お茶を飲む時、必ず1杯分だけ残すところ。
スナック菓子を中途半端で食べ残すところ。
扉を微妙に開けておくところ。
あげればあげるだけキリがない。
些細なことだけど、積み重ねる度に
イライラも募っていく。
そして今日、爆発してしまった。
少し時間が経って頭が冷えてきた。
些細なことと言えば、
彼は私が何かをする度に
どんなに些細なことでも
「ありがとう」と言ってくる。
そんな彼に惚れたんだ。
謝りに行こう。
ふと玄関を見ると花瓶に入った花があった。
「そういえば花瓶の内側汚れてたし
水入れ替えるの忘れてたな…」
水を入れ替えようと花瓶を覗き見る。
すると綺麗になった花瓶に綺麗な水がはられていた。
「え、そうか…」
そういえばこの間、彼がやってくれてたんだった。
些細なことでもやがては大きなものとなり、
気づかなければいけないことも中にはあるんだ。
どんな些細なことでも
「ありがとう」
と言えるように私も努力しないとな。
しぐれ
#22 心の灯火
「君には無理だよ」
その一言で、涙が流れた。
その涙で
心が濡れて何かがスっと消えていった。
消えないように
消さないように
毎日毎日頑張ってきた。
必死に足掻いてきた。
でも、心の灯火ってこんなにも
簡単に消えてしまうのか。
いや。
自分はそんなんじゃ挫けない。
そう言い聞かせて、心を新たな火で
灯した。
しぐれ
#21 開けないLINE
「LINE♪」
誰かから通知が来た。
しかも3件続けて。
「今暇?」
最後の文章だけがポップアップされた。
え、暇だったらなんだろう。
内容によっては暇じゃない。
今LINEを開いて既読をつけてしまっては
「暇」と認識されてしまうだろう。
でも、この前に送られてきた文章の中に答えがあるのかもしれない。
気になる。
開いてやろうか。
いや、待て。
「〇〇について聞きたいんだけどさ……」
「今〇〇と遊んでてさ……」
の2択がこいつの場合ほとんどだ。
開いて答えてしまえば早いのだが、こいつと関わるとろくでもないと心が騒いでいる。
だから僕はそっとLINEの通知を見ないフリした。
心の通知に既読をつけて従うことにした。
しぐれ
#20 不完全な僕
「あなたってそういうところがダメだよね」
そう言われても「だから何」としか思えない。
その一言って結局個性を否定しているし、
自分の価値観を遠回しに
押し付けているだけじゃないのか。
別にそれを直したところであんたに利はないし。
それを言うあんただってダメなところはあるだろう。
なのに他人に対してはそういう言い方をして
自分は悪くない。
私はあなたのそういうところが嫌い。
と言ってくる。
他人を否定するその性格に対して
そのままそっくり言い返してやりたい。
そう思いながら右から左へ受け流す。
完璧な人なんてただのロボットだと思う。
不完全だからこそ他人の失敗を許せるし、
自他を認めることができる。
不完全な人間の方がよっぽど人間らしいじゃないか。
しぐれ
#19 香水
「この花の名前知ってる?」
君が教えてくれた好きな花は
甘くて優しい果実のような香りがした。
秋が深まり、森は赤や黄色に染まるこの時期。
この香りを嗅ぐだけであの日のことを思い出す。
いつしか僕もこの香りの虜になっていた。
香水も、ハンドクリームも買ってみた。
いつでも君を思い出せるように。
忘れないように。
君に出会えたことで僕の人生は救われたよ。
「ありがとう」
お盆は過ぎてしまった。
けど、この金木犀を君に見せたかったんだ。
またどこかで会おうね。
白く細い煙とともに甘い香りが天に昇る。
本当の愛を教えてくれた君に贈る
初恋の香り。
しぐれ