日見しぐれ

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8/28/2024, 8:22:17 AM

#16 雨に佇む

1XXX年12月X日 未明
南東部にあるとある部族の集落にて、
複数名の変死体を派遣された支援部隊が発見。

調査の結果、行方不明者17名。
死者は現状わかるもので
28名にも上ることがわかった。

変死体は枯れ木のような状態で、まるで魂か何かを抜き取られたかのようだったという。

この地域では気候変動による不作が相次ぎ
国からの支援を待っていた。
しかし、山脈をいくつも超える必要があるため
それらに遅れが生じていた。

住民の話によるとおよそ3年前、
1人の人物から救荒作物の種子を譲り受けたという。

そのこともあり、一時は難を逃れたのだというが
詳細は不明。追って調査結果を記載します。

ー帝国新聞ー

___

「こんな事件が起こっていたとは……」

季節外れの大雨。

そんな日は仕事を早く切り上げて
お気に入りの酒場で1杯のエールを飲んでいる。
この時間がなんとも心地よい。

「最近物騒な事件が多いですねぇ、ダンナ」

見た目からして酒好きそうな酒場の店主が
手に何かを持って声をかけてきた。

「朝市場で貰った最高のアジのフライだよ
サービスだからお代はいらないよ〜」

そう言って自分の仕事に戻っていく。
今の自分の仕事は気候に左右されやすく
雨が降ったら切り上げるしかない。

「しかし、飲食店だと
そういう訳にもいかないんだな」

そんなことを思いつつ
窓の外の雨粒が滴るのを眺める。

すると
目線の先に1人の少女が
道の真ん中に佇んでいるではないか。

風邪をひいてはいけないと
すぐさま駆け寄り、雨で濡れた少女に声をかける。

「こんなところにいると風邪ひくぞ」

少女は体をゆっくりと動かし口を開けた。

「知恵を食べると食べられちゃうの
おじさん、お母さんを助けて……」

「…?!」


しぐれ

8/26/2024, 12:16:58 PM

#15 私の日記帳

思いついたことをひたすら書く。

1日1回はノートを開いて一言書くようにする。

なんでもいい。

ストレスを溜めないように。

周りを傷つけないように。

ノートに想いを書き綴る。

言葉にしてカタチに残す。

日々の積み重ねが
やがて大きな自分だけの物語となるのだから。


しぐれ

8/25/2024, 12:42:44 PM

#14 向かい合わせ

気になるあの子と向かい合わせ。

緊張して目が合わせられない。

手が震える。

体は向かい合っていても、
顔だけがなぜか逸れてしまう。

会話も途中までは盛り上がっていたけど、
話題が尽きてしまってお互いに気まずい……。

やばい、逃げ出したい。

向かい合わせで慣れるのって時間がかかりそう。

この後どうしよう……。



しぐれ

8/24/2024, 12:59:57 PM

#13 やるせない気持ち

今日は気になるあの子とのデートだ。

今日こそ想いを伝えようと心に決めた。

仕事の都合上なかなか予定が合わなくて、
ようやく休みが重なったこの日。

前々から予定をすり合わせてようやく当日を迎えた。

楽しみすぎて一本早い電車に乗ってしまった。

「暇だなぁ……早く来ないかなぁ……」

すると、彼女から連絡が来た。

『ごめん、洋服選ぶのに時間かかっちゃって🙏💦
いま電車乗ったとこ💦もう着いてるよね?急ぐね!!』

そんなに気にしないでいいのに。
むしろこっちが早く来すぎたんだから。

「気にしなくていいよ!慌てないでゆっくり来て!
早く来すぎただけだから大丈夫!〇〇にいるね!」

こんな文章で、伝わったか?
まぁいいか。早く会いたい。

しかし、待てど暮らせど返信も来ず、
彼女は姿を現さない。

心配になった僕は思い切って電話をかけてみた。
電話のコールが6回7回と鳴り続ける。

繋がらない……。

嫌われたのかなぁ。
そう思いながらスマホを手に取る。

もうこんな時間か。

時刻は18:00
約束の時間はとっくに過ぎている。

そろそろ帰るか。

通知のニュース速報が目に入った。

「事故か…ってこの場所…」

本日昼12:00頃〇〇駅付近にて
乗用車と歩行者による事故が発生。
被害者の女性〇〇さんは搬送先の病院で死亡が確認。
また、乗用車は店舗に突っ込み、
運転手の男性はその場で死亡が確認され、
一緒に乗っていた子供は軽傷を負った
警察は詳しい事故の原因と身元の確認を行っています

一瞬で世界が凍った。

僕が早く来たから……?

誰のせい?誰が悪い?

誰も悪くない?

どうすれば良かったんだろう。

やり場のない色々な思いが脳内を巡った。


しぐれ

8/23/2024, 12:24:32 PM

#12 海へ

「こっちこっち〜!」

夏休み子供たちが楽しそうにはしゃいでいる。

日差しは砂浜を熱し、素足じゃとても歩けない。

「元気だなぁ……」

海ではしゃぐ子供たちをみて少し羨ましく思った。

自分もあのころは友達と海に来たら
一緒にはしゃいでたな。

そこにあるすべてのものが遊び道具だった。

海水、砂浜、貝殻。

どれもこれも夏の思い出だった。

しかし、今はどうだろうか。

あのころは遊ぶために海へ訪れていたのに。

今は疲れを癒すために海に来ている気がする。

「疲れているんだなぁ」

そう思いながら、
次第にあのころの気持ちを取り戻したくなってきた。

気がつけばサンダルを脱いで、
熱々の砂浜を走り出し、海水に足を進めていた。

昔のようにはしゃぐのも癒されるかもしれない。

そう思った夏の思い出。


しぐれ

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