キンモクセイ
この匂い…キンモクセイだ。
もう、この季節か…。
君を好きになった時も、キンモクセイが咲く時期だったかな…?
ちょうど一年。
君に片想いして。
行かないでと、願ったのに
『待って…!行かないでっ!』
この一言が言えたところで、君は待ってくれるだろうか。
いや、待ってくれないよね。
だって、言えないんだもん、その一言が。
その代わりに、
「ずっと、待ってる。」
君が生きて帰って来てくれることを願って。
そんな悲しそうな顔しないでよ。
行かないでって言いたいけど、
そんなこと言ったら、君を困らせる。
だから、言えない。
「じゃあ、行ってくる…。元気でな。」
「うん…。」
行っちゃう…。待ってよ、ねぇ、待ってよ。
気がつけば君のもとに走り出して、
後ろから抱きついた。
「…っ、ごめん、わがままでごめん…。でも、たぶん後悔するから言うね。……行かないで…。」
なにも言わずに抱き締め返す君。
自然とあふれでてくる涙。
どのくらい時間がたっただろうか。
君が乗る予定の汽車が汽笛をならしながら来る。
顔を上げると、目に涙をためた君の顔がある。
「ごめんっ、ごめん…っ、一緒にいたいけど…けど…っ、行かなきゃダメなんだ。」
そう言って、手をはなす君。
そうだよね、君の使命だもんね。
御国を守るため…か。
ずっと、私のそばにいて守ってほしいなんて言えない。
「…うん、いってらっしゃい…!!」
無理矢理作った笑顔で君を見送る。
未来は大体想像できてる。
君はもう…。
君を乗せた汽車が見えなくなる。
――― 数年後
終わったよ…やっと。
君が守りたかった未来に私は生きてるよ。
たくさんの犠牲も出たけど、
だからこそ、最期まで生きるから。
まだ、そっちには行けないかな…?笑
でも、たまにね、
こんな時代に生まれてなければ、君と一生を添い遂げることができたのだろうか。
とか、思っちゃうんだよね。
出会えただけでも、幸せか…。
秋恋
去年の秋はまだ君のこと好きじゃなかったっけ?
去年の長距離大会の日
友達が好きな人と写真を撮りたくて、
でも、ツーショットを撮る勇気はないからって言って、
部活のみんなで集合写真撮ってしれっと隣になるように仕向けた
協力してたよね君も
今年は無理そうかな集合写真
もう一年もたったね
高校に入ってから二度目の秋
長距離大会がだんだんと迫ってくる
今年は言えるかな
「頑張ろうね」って
あの日の景色
ねぇ、君は覚えてる?
一緒にコート整備した日
廊下で声をかけてくれた日
私のテストの点数聞いてきて「意外とバカ?」っていじってきた日
全部私にとっては宝物で、忘れたくないもの
なんで話せなくなったんだろう
私のせいか…
またあの日のように話せる日が来ることを願ってる
雨の香り、涙の跡
どうしたらいい?
君になんて言って謝ればいい?
分からない。
君の気持ちが知りたい。
「無視してごめん」
って言ったら君は許してくれる?
こんな私を、最低な私を許してくれる?
こんなことを考えながら昇降口に行くと雨の匂いがした。
(雨降ってるじゃん…)
今の私の気持ちのようにどんよりした空。
君のことを考えれば考えるほどあの日にしてしまったことを後悔してる。
今にも涙が出てきそう。
自業自得なのに。
自分のせいなのに。
避けられてるかもって考えるだけで、胸が苦しい。
こんなに君のこと好きだったんだね。
「ごめん…」
ポツリと呟いた声は雨の音で誰にも聞こえない。
雨のおかげで涙が隠せる。
また、前のように話したいけど、もう無理な気がする。
戻りたい。過去に。
戻ってそのときの自分に言いたい。
「変な駆け引きすると、とんでもないことになるよ。嫌われるよ。」って
謝りたいのに、勇気が出ない。
もし別のことで私を嫌っていたら?
それはそれで気まずすぎるし、謝ったからといってもとに戻れるとも限らない。
私はどうすればいい?
ねぇ、誰か助けて。
涙がボロボロとこぼれ落ちる。
でも、雨にかき消されてしまう。
明日こそは…。
そう思いながら雨の中を歩いていく。