『手のひらの贈り物』
私の目の前には、手のひらサイズの贈り物がある。
それは、指輪だ。
とっても豪華で高そうな指輪。
大きなサイズダイヤがギラギラと輝くようにカッティングされている。
私はそれを、勢いよく床に叩きつけた。
「こんなもの、いらないわ!!」
ミニカードが、指輪の入っていた箱から落ちた。
私はそれを拾って、泣きながらぐしゃりと紙を握りつぶした。
『僕と結婚してください』
「あなたが生きてなければ、意味なんてないじゃない……」
落としかけた指輪を拾おうとして、事故に遭い死んでしまった。
そんな私の初恋の相手。
私はたった一人、豪華な指輪を前に泣き崩れた。
おわり。
追伸
スマホ機種変更したけど、慣れてないうえに書きづらいな……。
『雪の静寂』
真っ白い音が辺りに響く。
もしも、雪の静寂を色にするならば、それは白色だろう。
私は、そう感じた。
それは、まるで牛乳の一雫であるミルククラウンのように。
それは、まるで滑らかに続くピアノの鍵盤のように。
それは、まるでふかふかの天使の羽のように。
それは、まるで悪意を知らない純粋無垢な子供の笑顔のように。
それは、まるで……物言わぬ骨になった、あなたのように。
痛いくらいの心の悲痛な叫び声が、真っ白い絶叫が、耳が痛くなるほどに……雪の静寂が辺りを支配していた。
生きていてほしいと、思った。
生きてはいないだろうと、わかってはいた。
笑うあなたを見つけたいと、思った。
笑うことができないあなたを見つけたくはないと、感じた。
知りたい気持ちと、知りたくない気持ちがあった。
「結局、私は本当にあなたの子だったのですか。おかあさん」
答えはかえってこないまま、真実と共に雪の静寂に消えた。
おわり
『明日への光』
明日への光が眩しくて、目に染みた。
ようよう白くなりゆく山際は、なんて言葉は誰の言葉だっただろうか。
僕は今、山に登って白湯を片手に朝日が登るのを眺めていた。
たった一人、生き残った僕だけが、太陽を眺めて涙を流す。
「あぁ、みんな死んでしまった」
口に出してみると、本当に終わったのだな、という気分が心を支配する。
随分と酷い出来事だった。
よくあるキャンプに来た筈だった、はず、だったのだ。
まさか、楽しいだけのキャンプ地が、そこに一人殺人鬼が紛れ込むだけで密閉された檻、クローズドサークルになるなんて、誰にも予測出来なかっただろう、出来ていたら来なかった。
既に鼻が馬鹿になっている。
脳だって麻痺している。
ただ、唯一。
目の前に、殺人鬼によって晒された君の首と視線を合わせる。
蛮族のトロフィーのように、木の枝を突き刺し棒付きキャンディーみたいにされてしまった、物言わぬ君。
「お前だけは絶対に助けるから」「キャンプになんて誘ってごめん、ごめんな」「お前のこと、最初は嫌いだったけど。今は生涯で最高の親友だって思ってる」「……生きてくれ、頼む」
たった一晩、六時間にも満たない時間が、まるで人生の走馬灯のように駆け巡り、何度も何度も、壊れた映画の再生テープのように僕の中で繰り返される。
既に光を失った君と、死んだような瞳の僕。
それでも、太陽は登って、明日への光が差し込んだ。
生きなくてはいけないのだ。
君の分までも。
太陽の光が……どこまでも目に染みた。
おわり
『星になる』
夜空に星が瞬いている。
手元にあるココアが入ったマグカップが温かい。
「ねぇ、星になるって……どういう気分だと思う?」
「んぁ? なんだよ、急に」
私が窓枠に寄りかかって、ポツリとそう言うと、彼は眠そうな声でそう問い返してきた。
「別に……ただちょっと、気になっただけ」
「……そうだなぁ。意外と頑張ってんじゃね」
「頑張る? なんで?」
私が不思議そうに首をひねると、彼は私の側に近寄って来て遠い目で月を眺めながら言った。
「ほら、光るのってさ、意外と疲れるじゃん。だから、頑張ってんじゃねって思って」
「ふぅん……」
「どうしてそんな事を聞いたんだ?」
「そうね……しいて言うなら、」
「しいて言うなら??」
私は一言、ポツリと零した。
「生きているのが疲れたから、星にでもなってみようかと思ってただけよ」
「……え」
「でも、辞めたわ。だって星になって頑張らなきゃいけないなら、あったかいココアがある方がまだマシだわ」
そう言って私は、手元のぬるくなったココアを飲み干した。
おわり
『ぬくもりの記憶』
あったか、ほこほこ、ぽっかぽか。
これが僕のぬくもりの記憶だ。
ずっとずっと子供の頃、おまじないのように唱えていた言葉。
あったか、ほこほこ、ぽっかぽか。
具体的にどんな事をした、なんてのは覚えていない。
しかし、冬に体が温まったときとか、心が嬉しいと思ったとき、僕は必ずこういった言葉が浮かぶ。
「だから、僕は……みんなにもお裾分けしたかったんだ」
「だからって街なかで誰それ構わず、カイロを配り歩くのマジで辞めてくれ。幼児に声を掛けて不審者扱いされた幼馴染の事情聴取する警察の俺の気持ち考えて事ある?」
「君が警察官で本当に良かったよ」
「せめてお前がヤクザ顔負けの強面じゃなけりゃあなぁ……」
おわり