『時を止めて』
時を止めて何ができると言うのか。
思考というものが、脳伝達によるものだというのならば、きっと時が止まった空間で、我々は思考すら出来ないだろう。
いや、もっと言うなれば……。
――我々は、時が止まった事にすら気がつけないだろう。
「だから、時が止まっても無意味だ」
「あなたって、ときどき無性に情緒に欠ける発言をするわねぇ……今ここで時が止まれば良いのに、は比喩表現だというのにねぇ……」
「残された時と未来を、今を大事にして生きていたい。君と思い出を紡ぎたい……架空の意識もない永遠というものより、私は具体的な実現性のある未来を君と描きたいのだが」
「あら、素敵。惚れ直しちゃうわ」
おわり
『キンモクセイ』
「キンモクセイって、なーんだ?」
「ええ、クイズのレベル低すぎだろー」
「はは、やっぱり分かっちゃうかぁ」
「そりゃ、知らない方がヤバイからなぁ……」
「「この星の名前、禁木星!!」」
これは、随分と先の地球の未来。
木の資源が枯渇しそうになり、木製の物が禁じられた世界。
割り箸は愚か、家や椅子などの家具すらも木製から別の素材になった世界。
禁木星と呼ばれるようになった星に住む、未来に住む世界の人々の話。
……続かない。
おわり
『秘密の標本』
秘密の標本というものがある。
誰しもが秘密を抱えている。
そんな秘密の標本を眺める事が出来る。
標本室への鍵を――僕は持っている。
逢魔が時。
僕は手渡された。
ただ道を聞かれて教えただけの仲で、たった数分話しただけの仲で……そして、数秒前に呆気なく頭を銃で撃たれて死んだ人に、僕は手渡された。
次の継承者は……君だ、と。
僕に手渡された、それが……秘密の標本室へ鍵だ。
これを使えば、どんな有名人の秘密をも握って、世界を自分の意のままにする事が出来る。
だからこそ……この鍵を狙う悪人が多く存在するって事だ。
どうして、どうして僕なんかに?
僕は至って普通の高校生だ。
他のクラスメイトのように学校から表彰されるような事はした事がないし、実はちょっとビビリで小心者だ。
でも、鍵は僕の手の中にあった。
……どうしよう、どうすれば良いのだろう。
僕は頭を抱えながらもとりあえず学校へと向かう。
その姿を付け狙う視線に気が付かないまま。
これは、僕が新たに出会う仲間を始めとして、みんなと悪から秘密を守るために戦う話だ。
おわり
『凍える朝』
凍える朝がやってきた。
昨日の出しておいたボールに入っていた水の、表面が薄く凍っている。
窓のしたにはつららが生まれてきていた。
小さな片手鍋でお湯を沸かして、ココアを飲む。
ひんやりとした身体に染み入るような甘さと暖かさ。
そう、こんな日々がつい、つい先日……から?
「で、こんな冬の朝が2年も連続で続くのって可笑しくない?」
「いや、気づくの遅すぎか」
おわり
『光と影』
光があるから、影がある。
そんな話を聞くが、もしも光と影。二つが1:1ではなく、1+1であったら、どうなるのだろうか。
「まったく、イカれた科学者の考えることは分からないね!」
光族という者がある。
正真正銘、光る、という特質を生まれ持った種族だ。
影族という者がある。
正真正銘、影を作る、という特質を生まれ持った種族だ。
基本的に、光族は警察で、影族は犯罪者として扱われる事が多い。
光族の能力は、明るく照らすだけでなく、闇に葬りさられた真実を照らすのにも、重宝された。
しかし、影族の能力は、日陰を作るという細やかなものから、真実を影に、闇に葬るといったら犯罪に適したものが多かったからだ。
だがしかし、影族が息絶えなかったのは、光族の影響が大きい。
なぜだかは分からないが、闇族の数が減ると光族の出生もまた減っていくのだ。昔の名残りだろうか。
少し前には、人類の完全なる平等な平和が約束されたというのに、それは影族にだけは適応されていないらしい。
影族だけは、生まれてきてはいけない能力を持っているにも関わらず、死ぬと死ぬで光族や他に迷惑がかかると、奴隷のような管理をされているからだ。
だから、こそ。
影族は脱走し、光族はそれを捕まえることを命令される。
自殺する前に、四肢を引きちぎっても良いから生きて捉えろ、と。
「まったく、イヤな仕事だ」
そう言って光族に生まれた一般的な若者が、今日も脱走した影族を追跡する。
……もしも、違った事といえば。
「?」
「え、かわいい」
その光族の青年が、脱走した影族の女の子に一目惚れした事ぐらいだろうか。
これは、影族の女の子に一目惚れした光族の青年が、世界を敵に回して好きな女の子に生きていて欲しい話であり、その女の子が世界をひっくり返すような重要なポジションであると判明してもなお、愛を貫くという純愛なストーリーである。
………………続かない。
おわり