好き、嫌い、
好き、嫌い、
そんな言葉は、
まだ解らなかったですが、
貴方が私の救いでした。
私は社会から弾き出された、
存在しない者。
誰にも必要とされず、
人が見ない振りをする、
街の醜い闇の中で、
身を潜め、息を殺し、
藻掻くように生きてきて。
そんな私に、手を差し伸べ、
光ある世界へ、
導いてくれた貴方。
そんな貴方は、気が付けば、
私の全てになっていたのです。
好き、嫌い、
好き、嫌い、
私に千切られた花弁が、
地面に舞って行きました。
地を彩る花びらの赤色が、
貴方を奪えと、
私の心を駆り立てます。
花占いなんて、
私には必要なかったのです。
私は。
貴方の全てを奪います。
私達を苦しめる物の無い世界で、
貴方と私は一つとなり、
永遠となる為に。
貴方の胸には、
真っ赤な花が咲き、
貴方は力無く崩れ落ちます。
私は、貴方の最期の吐息を、
口唇で受け止めます。
そして、真っ赤な花に埋もれた、
貴方の隣に寄り添い、
私の胸にも、
真紅の花を咲かせます。
私と貴方の赤は、混ざり合い、
大地を朱く染めます。
好き、嫌い、
そんな言葉では、
語れない程に、
貴方が欲しかったのです。
これで、
貴方と私は永遠に、
二人きり。
雨の香り、涙の跡
糸
絡まってしまった糸。
綺麗に巻いていた筈なのに、
なのに、気が付けば、
複雑に絡まりあってた。
そう。この絡み合う糸は、
まるで貴方と私の様に、
解こうとすれば、
かえって、絡み合って、
解けなくて。
貴方を傷付ける心算なんか、
無かった。
謝れば、逆に怒らせ、
沈黙を貫けば、
貴方は一人離れていく。
絡み合う糸を、
元に戻したくて。
私は、結び目に爪を食い込ませ、
解そうと、力を掛ける。
突然。
ぷつり、と、
糸が切れる音がした。
切れてしまうくらいなら、
絡まったままの方が、
良かった。
切れてしまったら、
もう二度と、
綺麗に繫がることは、
ないんだから。
そう。
貴方と私は、
離れ離れになる運命。
そう言われたみたいで、
胸が、鋭く痛む。
引き合う糸。
絡まり合う糸。
切れてしまった糸。
解れた不均一な断面。
それが、私の未練みたいで、
情けなくなる。
もう。
私と貴方が紡ぐ物語の糸は、
終わりなんだ、と、
受け入れられたら、
楽なのに、ね。
届かないのに