別れ際に
久しぶりに再会した、
懐かしい、幼馴染。
子供の頃から、君の事を、
憎からず思ってたけど、
ずっと言えないまま、
それぞれ、大人になって、
それぞれ、故郷を離れた。
何年も経って再会した君は、
すっかり大人になってた。
泣き虫で、怖がりで。
直ぐに俺の背中に隠れてた君は、
何時の間にか、優しくも、
しっかり者になってた。
俺は君の事を、
忘れられずに居たけれど、
気になってたのは、
俺だけだったみたい。
暫く会わない間に、
君には、恋人が出来てた。
君との別れ際。
思わず『またね』と言いそうになって、
慌てて、言葉を飲み込む。
君と俺。
これから二度と交わらない道を、
歩いて行くんだから。
別れ際に贈る言葉は、
『さよなら、元気でね』。
…君の幸せを、
遠くから、祈るよ。
通り雨
街で偶然見掛けた、
昔の恋人。
彼の隣には、
優しい笑顔で微笑む人。
絡める様に手を繋ぎ、
親しげに話しながら、
街を歩いて行く。
独りきりで眺めている私になんか、
気付く事もなく、
想い出のあの人は、
新しい恋人と街に消えて行った。
私の頬を、涙が伝う。
もう、忘れた心算だった。
涙なんか疾くに涸れたと思っていた。
なのに、涙が零れ、胸は痛む。
通り雨が降り出す。
さらさらと僅かに音を立てて、
街を、道を、木々を、
そして、私を。
別け隔てなく濡らす。
傘を差すことなく、
街を歩き続ける。
雨粒が、情けなくも涙に濡れた、
私の頬を隠してくれる。
そんな気がした。
止まぬ雨は無い。
そんな言葉なんて、
今の私には、到底、
信じる事は出来ない。
秋🍁
冬は、死の季節。
緑は枯れ、葉は落ち、
…そして朽ちる。
そんな冬を前に、
生き物は、秋という季節に、
限られた生を享受する。
秋の赤や黄色に、
美しく彩られた景色は、
まるで、モノクロの冬を迎える前の、
最後の晩餐の様だ。
秋は…美しい。
風に揺れる曼珠沙華、
それは、忍び寄る、
冷たい冬という死の気配。
でも、きっと。
大切な君と一緒なら。
死の国の、地獄の業火さえ、
この見事な、秋の赤の様に、
美しく見えるだろう。
私は、大丈夫だよ。
君が望むなら、
私は、何処へでも、
一緒に行くから。
だから。
繋いだこの手を、
決して、離さないと、
約束して欲しい。
窓から見える景色
窓から外を眺める。
この部屋から見える景色も。
廊下の窓から見える景色も。
屋上から見える景色も。
貴方との想い出が詰まってる。
窓から見える景色は、
貴方がいた頃と変わらず、
季節の移ろいを見せ、
その時々の様々な表情を、
見せてくれているのに。
貴方は…もう、居ない。
この世の何処にも、居ない。
貴方と一緒に眺めた、
この窓から見える景色は、
少しずつ、姿を変えていく。
それが酷く哀しくて。
窓から見える景色が
涙に滲んで見える。
そして、俺は。
貴方が居るだろう天に向かって、
そっと手を伸ばすんだ。
形の無いもの
貴方が私にくれたもの。
大人として必要な、
一般教養、知識、マナー。
読み書き、計算能力。
社会で生きる為の、
一般常識、生活の知恵。
コミニュケーション能力。
心が傷付かない為の、
ストレス対処法、
アンガーマネジメント。
生活を豊かにする為の、
音楽や美術等の芸術、
スポーツ、季節のイベントの経験。
そして。
沢山の優しさと、
深い…愛情。
貴方が私にくれたものは、
どれもこれも、全て、
形の無いもの…ですが、
とてもとても、
大切なものばかりです。
そう。
ペアリングの様に、
形のあるものでは、
ないけれど。
貴方の愛情に、
嘘は無い筈…ですから。