霜月 朔(創作)

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6/28/2024, 4:09:42 PM




夏の青い空を見ていると、
何だか、無性に悲しくなる。

夏の強い日射しも気に留めず、
麦藁帽子を被り、虫取り網を片手に、
甲虫を探し、蝉を追って、
朝から夕方迄、野山を駆け巡っていた、
あの日の少年は、
何処へ行ってしまったのだろう?

真っ白な入道雲の元、
太陽の激しい光を浴びて、
キラキラと輝く水面を見詰め、
海や川で、只管水浴びに興じていた、
あの日の少年は、
何処へ行ってしまったのだろう?

ここに居るのは、
本格的な夏の訪れを前に、
既に暑さに参った身体を引き摺り、
鬱々と仕事を熟す冴えない男が、
ただ、一人。

6/27/2024, 5:30:56 PM

ここではないどこか


今迄、本当に苦しかっただろう。
だが。その苦しみも、
もう直ぐ終わる。

生きていくという事は、
多かれ少なかれ、辛いものだ。
しかし、君の人生は、
余りに不遇で不幸だった。

しかし、君は。
その不遇を託つ事も無く、
向けられた悪意に染まる事も無く、
直向きに生きてきた。

もう、そんなに傷だらけになって、
心から血を流して迄、
頑張り続けなくても良いんだ。
…今迄、本当にお疲れ様。

さぁ。
このまま、私と共にゆっくり眠ろう。
大丈夫。何も怖くはないから。
これからはずっと、
私が君の隣に居るから、ね。

生命を断つ事でしか、
君を襲う数多の苦しみから、
救う事が出来ない私を、
どうか、赦して欲しい。

さあ。
此処では無い何処かで。
今度こそ、二人で幸せになろう。

…約束だよ。

6/26/2024, 6:06:51 PM

君と最後に会った日


あの日は。
ごく普通の日だった。
特に大きな事件もなく、
暑くもなく寒くもなく、
雨も降っていなかった。

ただ、あの日。
私と君は、激しい口論になった。

今迄、君と喧嘩した事は、
無かった訳じゃない。
だから。今回も。
直ぐに仲直り出来るだろう。
…って、思ってた。

だけど。
そのまま、君は私の元を去った。
そして、二度と、
私の元に、戻っては来なかった。

淡々と続く日常の、
何でもない一日になる筈だったのに。
あの日は、
恋人だった君と最後に会った日。
…になってしまったんだ。

6/25/2024, 5:12:56 PM

繊細な花


綺麗な花を咲かせる。
…という事は、
恐ろしく手間が掛かる。

取り敢えず、苗を庭に植えて、
毎日、水をやってれば済む、
なんて考えは、甘すぎる。

その花の性質を学び、
剪定、病気の予防、害虫駆除など、
様子を見ながら、様々な世話をし、
最適な量の肥料や水を与える。

相当な労力。そして、幸運に恵まれて、
繊細な花は、その美しい姿を見せてくれる。

そんな、繊細な花を育てるなど、
俺には、とても出来はしないが。
それでも。
お前という、繊細な花を守る事なら、
少しだけ自信がある。

だから…。
偶には、素直に弱音を吐いてくれ。
俺が、何とかしてやる。

6/24/2024, 4:52:13 PM

1年後


梅雨の合間の晴れた日。
まるで夏みたいに、
太陽がキラキラ輝いてた。

綺麗な青空、白い雲。
降り注ぐ太陽の光。
普通の人はきっと、
こんな日は『良い天気』って
言うんだろうな。

だけど。ボクは。
太陽の光に負けてしまうから、
窓から恨めしく青空を眺めてるだけ。

1年後には。
ボクの病気が良くなって、
太陽の下でも元気に過ごす事が、
出来る様になってるかも。

でも。
1年後には。
ボクの病気は悪くなって、
起き上がるのも辛くなって、
ずっとベッドで寝ているかも。

長いようで短い1年後。
ボクは…。

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