桜散る
今年こそ、君と一緒に桜を見たかったのに。
それを君に伝える事は…出来なかったな。
今度の休みに、一緒に桜を見に行かない?
以前は、簡単に言えた、
こんな飾り気もない単純な誘い文句も、
今の私には、君に伝える事が出来なくて。
もう遠い昔になってしまった、
君と一緒に桜を眺めた記憶と共に、
眼の前で散りゆく桜を、独りで眺めてる。
桜は散る時も美しい。
君が未だ私の隣に居てくれた頃。
君はそう言って、散りゆく桜を、
少しだけ淋しげな顔をして眺めていたね。
枯葉が落ち、生命の灯火が消え逝く、
晩秋の景色を愛した君らしい言葉だと、
その横顔と共に、今でも良く覚えてる。
桜散る。
君への想いも、未練も、恋慕も。
もう一度、一緒に桜を見たいという、
小さな希望さえ。
君に、何一つ言えないうちに、
今年の春も、舞い散る桜の花弁と共に、
終わりを告げる。
夢見る心
何時目覚めるとも知れぬ、
長い眠りに就く貴方。
食べ物を口にする事も無く、
呼び掛けにも応じる事も無く、
ただ、
その、機械的に動き続ける心臓と、
辛うじて保つ、僅かな温もりだけが、
貴方が生きている証。
…貴方が目を覚ましたら。
そんな事を、夢見る心さえ、
失いそうなる、長い長い時。
貴方は静かに眠り続けて…。
長い眠りの中の貴方は、
夢を見ているのでしょうか?
もし、貴方に、
未だ、夢見る心があるのであれば、
どうか…幸せな夢を見ていて欲しい。
そう願っています。
貴方が眠るベッドの脇で、
私は今日も、貴方の目覚める日を、
待っています。
届かぬ想い
もう君は、
私を見てはくれないだろう。
良かれと思ってした事で、
私は、君を怒らせてしまった。
でも、君と喧嘩をしたって、
直ぐに仲直り出来るだろうと、
高を括っていた。
でも、君は。
私を赦しては、くれなかった。
言い訳をするチャンスさえ、
与えてはくれなかった。
今でも。
私は、今でも君を見詰めているのに、
君は、私と目を合わせてくれない。
もう二度と、触れる事も、笑い合う事も、
言葉を交わす事さえ、出来ないのだと、
胸の痛みに堪え、君の背中を見送る。
届かぬ想い。
恐らく…永遠に。
それでも、私は。
君の事を、ずっとずっと愛してる。
神様へ
人の生命を奪う事でしか、
生きる事が出来なかった日々。
そんな地獄の様な世界から抜け出し、
罪悪感に苦しみ、贖罪の術を探して。
そんな、先の見えない闇の中で、
漸く、見付けた…。
私の生きる希望。
キラキラと輝く魂を持った貴方は、
私には眩し過ぎました。
でも、貴方の笑顔を見ているだけで、
私は救われた気がして居たのです。
血に塗れ、穢れ切った私が、
神様へ祈る事が赦されるのであれば、
この命尽きるその瞬間迄、
貴方の幸せを祈りましょう。
………。
神様へ。
こんな魂さえ汚れた私ですが、
それでも、私の全てを捧げます。
ですから、どうか…。
私の大切なあの人に、
幸運を齎して下さい。
快晴
ずっとずっと憧れてた先輩。
今迄、遠くから見てるだけだった。
でも、少し前から、
先輩と少しだけ親しくなって。
会話を交わせる様になった。
先輩に名前を覚えて貰えて。
凄く幸せ…だと、思ってた。
だけど。
先輩と親しくなって、知ってしまった。
先輩には、恋人が居るって事を。
失恋したんだから、
悲しくて、苦しくて、
泣いて泣いて…。
俺の心は、雨模様になるって思ってた。
だけど…何でだろう?
幸せそうな先輩と先輩の恋人の姿を見たら。
俺の心は。
見事な快晴。
雲一つない、青空が広がってる。
何故か…。
涙雨なんか、降りはしなかったんだ。