霜月 朔(創作)

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桜散る


今年こそ、君と一緒に桜を見たかったのに。
それを君に伝える事は…出来なかったな。

今度の休みに、一緒に桜を見に行かない?

以前は、簡単に言えた、
こんな飾り気もない単純な誘い文句も、
今の私には、君に伝える事が出来なくて。
もう遠い昔になってしまった、
君と一緒に桜を眺めた記憶と共に、
眼の前で散りゆく桜を、独りで眺めてる。

桜は散る時も美しい。

君が未だ私の隣に居てくれた頃。
君はそう言って、散りゆく桜を、
少しだけ淋しげな顔をして眺めていたね。
枯葉が落ち、生命の灯火が消え逝く、
晩秋の景色を愛した君らしい言葉だと、
その横顔と共に、今でも良く覚えてる。

桜散る。
君への想いも、未練も、恋慕も。
もう一度、一緒に桜を見たいという、
小さな希望さえ。
君に、何一つ言えないうちに、
今年の春も、舞い散る桜の花弁と共に、
終わりを告げる。

4/17/2024, 1:55:27 PM