ハッピーエンド
他人から見れば、
俺の人生なんて、塵屑みたいな代物だろう。
親と幼い頃に死に別れ、故郷を追われ、
戦場で戦う事が全てだった。
身体の一部を失っても尚、
俺には戦場に立つことしか、
生きる道が、ない。
そんな俺にも。
野の花に心を奪われる事もあった。
空の青さに目を瞠る事もあった。
季節の風に身体を預ける事もあった。
そんな些細な事が、
俺にとっては、生きているという証だった。
遠くない未来。
俺は、捨てられた人形の様に、
戦場で斃れ、そのままくたばるだろう。
こんな結末。
俺の事を、何にも知らない人が見れば、
アンハッピーエンドだと思うだろう。
だが。
護りたい人の為に死ねるのなら。
例え、戦場で独り息絶えるのだとしても。
俺にとってそれは、
ハッピーエンドなんだ。
見つめられると
何でだろう?
お前の事なんか、別に何とも思ってないし。
特別じゃない、只の友達だし。
だけど。
お前に見つめられると。
何だか、胸の辺りが苦しくなって。
少しだけ、鼓動が早くなって。
お前の前から逃げ出したくなる。
でも。こんなの、カッコ悪過ぎるから。
お前が俺を見つめてるのに気付くと、
俺はつい、文句を言ってしまう。
用もないのに、俺の事を見るなよ!…って。
なのに。
俺が何度文句を言っても、
お前は、僅かに笑みを浮かべて、
子供の様にキラキラした瞳で、
俺を見つめるんだ。
何時までもガキみたいな俺で、御免。
俺はまだ。
お前を見つめ返す事が出来る程、
強くは無いんだ。
My Heart
貴方に出会う迄ずっと、
私は人の温かさを知りませんでした。
道具として生かされていた私は、
心の無い殺戮兵器に成り果てました。
ただ、生きる為に戦っているのに、
何時しか、味方からも恐れられ、
私という人間は、存在しなかった事にされました。
道具としてさえ、生きる事を赦されない。
そんな私に。
人の温かさを教えてくれた。
人の心を教えてくれた。
人の世界に引き戻してくれた。
そんな貴方は、私の全てなのです。
私の心は貴方で溢れています。
貴方が望む事なら、私は何だってします。
貴方を護る為なら、私は誰だって消します。
だって、私の心は、
貴方で出来ているのですから。
だから。
私を拒絶しないで下さい。
私を怖がらないで下さい。
貴方は、私の心そのものなのですから。
ないものねだり
あいつは、俺には無い才能を持っている。
後輩を叱る事しか出来ない俺と違って、
あいつは後輩を上手に褒めて、
やる気を出させる事が出来る。
何でも真っ直ぐ突き進んでしまう俺と違って、
あいつは周りをきちんと見ることが出来る。
ないものねだりだとは、解っている。
だが。それでも。
俺は、あいつが羨ましい。
こんな俺でも。何時か。
あいつの親友になれるだろうか?
彼は、俺には無い才能を持ってる。
後輩にいい顔ばかりしちゃう俺と違って、
彼は、後輩の隠れてる才能を見出して、
叱咤激励して、才能を伸ばす事が出来る。
周りの顔色ばかり窺ってしまう俺と違って、
彼は自分の信念を貫く事が出来る。
ないものねだりだって、解ってる。
でも。それでも。
俺は、彼が羨ましい。
こんな俺でも。何時か。
彼の親友になれるのかな?
好きじゃないのに
知ってるよ。
お前は、ボクに同情してるだけだって事くらい。
お前が、友達が居ないボクを、
密かに見守ってくれるのも。
ボクが仕事でやらかしたミスを、
こっそりフォローしてくれてるのも。
全部全部…同情。
気付いてるよ。
お前が、ボクを哀れんでるだけだって事くらい。
ボクが母親に捨てられた子だったから。
ボクは愛を知らずに生きてきた人間だから。
ボクは陽の光の当たらない場所でしか、
生きていけない存在だから。
全部全部…憐憫。
どうせ、お前は、
こんな塵屑みたいなボクに親切にする事で、
優越感を覚えているだけだろ?
ボクの事、好きじゃないのに、
優しくなんかするなよ!
だって。
そんなに、優しくされたら。
勘違いしちゃうじゃないか。
もしかしたら、ホントにボクの事を、
好きなんじゃないか、って。
辛いだけだから、夢を見させないでくれよ。
もしかしたら、ホントにボクと、
ずっと一緒に居てくれるんじゃないか、なんて。