霜月 朔(創作)

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ハッピーエンド


他人から見れば、
俺の人生なんて、塵屑みたいな代物だろう。
親と幼い頃に死に別れ、故郷を追われ、
戦場で戦う事が全てだった。
身体の一部を失っても尚、
俺には戦場に立つことしか、
生きる道が、ない。

そんな俺にも。
野の花に心を奪われる事もあった。
空の青さに目を瞠る事もあった。
季節の風に身体を預ける事もあった。
そんな些細な事が、
俺にとっては、生きているという証だった。

遠くない未来。
俺は、捨てられた人形の様に、
戦場で斃れ、そのままくたばるだろう。
こんな結末。
俺の事を、何にも知らない人が見れば、
アンハッピーエンドだと思うだろう。

だが。
護りたい人の為に死ねるのなら。
例え、戦場で独り息絶えるのだとしても。
俺にとってそれは、
ハッピーエンドなんだ。

3/29/2024, 3:04:08 PM