見つめられると
何でだろう?
お前の事なんか、別に何とも思ってないし。
特別じゃない、只の友達だし。
だけど。
お前に見つめられると。
何だか、胸の辺りが苦しくなって。
少しだけ、鼓動が早くなって。
お前の前から逃げ出したくなる。
でも。こんなの、カッコ悪過ぎるから。
お前が俺を見つめてるのに気付くと、
俺はつい、文句を言ってしまう。
用もないのに、俺の事を見るなよ!…って。
なのに。
俺が何度文句を言っても、
お前は、僅かに笑みを浮かべて、
子供の様にキラキラした瞳で、
俺を見つめるんだ。
何時までもガキみたいな俺で、御免。
俺はまだ。
お前を見つめ返す事が出来る程、
強くは無いんだ。
My Heart
貴方に出会う迄ずっと、
私は人の温かさを知りませんでした。
道具として生かされていた私は、
心の無い殺戮兵器に成り果てました。
ただ、生きる為に戦っているのに、
何時しか、味方からも恐れられ、
私という人間は、存在しなかった事にされました。
道具としてさえ、生きる事を赦されない。
そんな私に。
人の温かさを教えてくれた。
人の心を教えてくれた。
人の世界に引き戻してくれた。
そんな貴方は、私の全てなのです。
私の心は貴方で溢れています。
貴方が望む事なら、私は何だってします。
貴方を護る為なら、私は誰だって消します。
だって、私の心は、
貴方で出来ているのですから。
だから。
私を拒絶しないで下さい。
私を怖がらないで下さい。
貴方は、私の心そのものなのですから。
ないものねだり
あいつは、俺には無い才能を持っている。
後輩を叱る事しか出来ない俺と違って、
あいつは後輩を上手に褒めて、
やる気を出させる事が出来る。
何でも真っ直ぐ突き進んでしまう俺と違って、
あいつは周りをきちんと見ることが出来る。
ないものねだりだとは、解っている。
だが。それでも。
俺は、あいつが羨ましい。
こんな俺でも。何時か。
あいつの親友になれるだろうか?
彼は、俺には無い才能を持ってる。
後輩にいい顔ばかりしちゃう俺と違って、
彼は、後輩の隠れてる才能を見出して、
叱咤激励して、才能を伸ばす事が出来る。
周りの顔色ばかり窺ってしまう俺と違って、
彼は自分の信念を貫く事が出来る。
ないものねだりだって、解ってる。
でも。それでも。
俺は、彼が羨ましい。
こんな俺でも。何時か。
彼の親友になれるのかな?
好きじゃないのに
知ってるよ。
お前は、ボクに同情してるだけだって事くらい。
お前が、友達が居ないボクを、
密かに見守ってくれるのも。
ボクが仕事でやらかしたミスを、
こっそりフォローしてくれてるのも。
全部全部…同情。
気付いてるよ。
お前が、ボクを哀れんでるだけだって事くらい。
ボクが母親に捨てられた子だったから。
ボクは愛を知らずに生きてきた人間だから。
ボクは陽の光の当たらない場所でしか、
生きていけない存在だから。
全部全部…憐憫。
どうせ、お前は、
こんな塵屑みたいなボクに親切にする事で、
優越感を覚えているだけだろ?
ボクの事、好きじゃないのに、
優しくなんかするなよ!
だって。
そんなに、優しくされたら。
勘違いしちゃうじゃないか。
もしかしたら、ホントにボクの事を、
好きなんじゃないか、って。
辛いだけだから、夢を見させないでくれよ。
もしかしたら、ホントにボクと、
ずっと一緒に居てくれるんじゃないか、なんて。
ところにより雨
お前はずっと俺の隣にいて。
一緒に美味いものを喰ったり、
一緒に楽しい事やったり、
一緒に辛い事を乗り越えたり、
いつでも『一緒』が普通だと思ってる。
そりゃ、文句が全く無い訳じゃない。
時々不機嫌になることもあるし。
偶に、喧嘩だってするし。
それでも。
俺達の絆は、揺るぎないものだと思ってるし、
俺はお前の一番の理解者だと思ってる。
だけど…。ふとした瞬間。
お前の心の中に、元彼との思い出が、
今も色鮮やかに残って居ることに気付かされると、
俺の心は俄に掻き曇り、雨模様になり…。
そして、大粒の雨粒が落ち始め、次第に大雨になる。
だけど、俺はそれに気付かない振りをする。
…ほら、晴れてるじゃないか。
雨なんか、何処にも降ってない、と。
俺の心は、
晴れ時々曇…ところにより雨。
でも、こんな時こそ俺は、
眩しい程の快晴の笑みを浮かべて見せるんだ。