お題:街へ
『ざわめきの中で』
あちらこちらから聞こえてくる
楽しそうな声と笑い声
夜の帳が降りる街に
明々と光が灯る
静かにかすかに降り注ぐ雪の
なんと正反対なことでしょう
その中を歩く私達だけ
ただ静かに
ゆっくりと動いているかのようで
喧騒からかけ離れた場所にいるような
そんな錯覚さえも覚える夜
そんな夜をくれた街に
今日もまた足を向けている
ただ1人静かに歩いている
お題:この世界は
『きっとかけがえのない』
この世界はきっと
誰かにとっては優しくて
誰かにとっては意地悪だ
いつだってそうだった
一方が良くなることで
もう一方が悪い方に流れてしまう
だけど変わらないことがあって
いついかなる時も
人の心の中だけは
誰にも変えられはしない
だからあなたが思うように
この世界をこの日々を
あなたの感じるままに
笑って泣いて怒って
ボロボロになって
這いつくばってでも
あなたが望む世界へ
生き抜いたその先で笑って
そこにきっとかけがえのない
誰にも変えられない世界があるから
あなたの灯火を枯らさないで
どうかそのまま生きていて
お題:どうして
『与えられたもの、失くしたもの』
ねぇ、何がダメだったの?
ねぇ、何が好きだったの?
そんな事を聞いてでも
必死に会話をしようとして
でも、こっちを見向きもせずに
大切なものは背を向けて去って行く
与えられたこの場所で
咲けなかった私が悪いの?
日向に行って光を浴びて
大きく育ったあの人がいいの?
なりたくてなったわけじゃない、なんて
言い訳でしかないのに
そんな言葉が頭を巡る
どうして?どうして?を繰り返して
繰り返すことに疲れていた
だから、日陰にいる私に
気づいてくれたあなたが光に見えた
でも、今ならわかる気がした
あの時の私はどうして?と悩んで苦しんで
そして少しずつ自分を変えていった
そんなきっかけをくれたあなたに
どうして?ではなくありがとう!を届けたい
ねぇ、あなたのおかげで
私は新しい場所で頑張れてる
ねぇ、あなたは今もどこかで笑ってるかな
そして、私みたいな誰かを救ってるのかな
お題:夢を見てたい
『舞踏会』
昔読んだ物語の
1番好きな場面はどこ?
そんな話を不意に振られた
幼なじみとのふとした会話
私の好きな昔話
題名は覚えていないけれど
確か煌びやかな場所で
舞踏会が開かれてた
子供心にはとても眩しく
大人になっては笑い話
素敵な場面だね、と微笑んだ
その眩しさには勝てないなんて
キザな事を思ったけど
口には出さず留めたままで
あなたとの舞踏会なら
今すぐにでもできそうなのに
追いかける度に逃げていく
あなたがシンデレラなら
魔法が解けるその前に
私と素敵なひとときを
いえ、ダメね、だってあなたにはいるのだから
共に幸せになるべき人が
あなたの幸せを祝えるなら
私はあなたの幼なじみのままでいい
そう言って私はただ静かに
震えるあなたの手を離した
お題:ずっとこのまま
『夜明け前』
このまま朝が来ないなら
明日なんて来ないなら
笑いあったあの日のまま
時が止まっていたら、なんて
どうしようもない妄想と
たったひとつの叶わぬ望みが
跡形もなくこぼれ落ちた
まだ薄暗い部屋の片隅
あなたを想い泣く私に
透明なあなたは見えないから
まだ暗い私の周りを
明るく照らす燈に気づかないまま
今日もまた変わらない
朝を告げる無機質な音が
私を現実に引き戻すのだ