お題:ずっとこのまま
『夜明け前』
このまま朝が来ないなら
明日なんて来ないなら
笑いあったあの日のまま
時が止まっていたら、なんて
どうしようもない妄想と
たったひとつの叶わぬ望みが
跡形もなくこぼれ落ちた
まだ薄暗い部屋の片隅
あなたを想い泣く私に
透明なあなたは見えないから
まだ暗い私の周りを
明るく照らす燈に気づかないまま
今日もまた変わらない
朝を告げる無機質な音が
私を現実に引き戻すのだ
お題:紅茶の香り
『至福のひととき』
高貴な香り
静かな部屋
かすかに聞こえる鳥の囀り
穏やかに流れる時の中で
ぺらぺらとページを進めてゆく
誰にも邪魔されることのない
私だけの世界
様々な情景の中に身を委ねて
静かに本を楽しむ時間
そのお供にはいつもの
甘い時を経て苦みを持つ
とっておきのその香りを
できることなら他でもない
私の愛するあなたから
私に注いでくれませんか
この至福のひとときが
さらに良いものとなるように
お題:巡り会えたら
『想い出』
めでたしめでたしで終わる物語の
その先を知りたいと言う私に
人はやがて愛する人の思い出の中で
生きるようになるのだと
母はいつも言っていた
その言葉の意味なんて
幼い私は知らなかったけれど
ただ、ふぅんと聞いていて
その時がきて知る悲しみも
その時に気づく胸の痛みも
全部伝えられないのだと
遅すぎる程の後悔をした
いつか時が巡って
あの日々でまた会えるのなら
母が話してくれた物語の
その先を知りたいなんて言わないから
あの時の懐かしい思い出を
笑って語り合えるように
それまではただ静かに
想い出の中で会っていたい
お題:君からのLINE
『奇跡』
書いては消してを繰り返し
連絡が無いトーク画を開いて
肩を落としてまた閉じる
連絡なんてしなくても
どこかで笑っていてくれるなら
それもいいのかな、なんて
笑えるほどには大人になったと思うけれど
やっぱりあなたからの連絡を待ってしまう私がいる
たった一言だけでいいから
元気だと教えてくれるだけでいいから
ほんの少しだけ私に
あなたの時間をくれませんか
ピロン、と聞きなれた音がなり
反射的に見た私の
この目が見たその奇跡が
これから先も続きますように
お題:君の奏でる音楽
『同じ音』
君はとても口笛が上手
でも僕は上手く吹けなくて
同じ音が出せないと泣く僕に
君は笑って言った
「同じ音ならあるじゃない」
その意味を理解出来なかったけれど
僕はその言葉に救われた
君の奏でる音楽はとても綺麗で
僕はとても不格好
それでも隣にいられた日々は
いつもとても暖かかった
君はとても物知りで
クイズを出すのが好きな人
君がいなくなった日々を
生きれるかなんて不安で仕方なかったけれど
最後にあなたが出したクイズの答えを
僕はずっと抱えて生きていくだろう
君と過ごした思い出と共に
あの日のクイズを皆さんにも
「同じ音を奏でる、みんながひとつ持っているものってなーんだ?」
どこからか君の口笛が聞こえた気がした
お盆なので大切な人を大切に出来るようにこの詩を。