お題:鐘の音
『時の報せ』
ゴーンゴーンゴーン
ああ、おやつの時間だね
お父さんがそう言って
子供たちが嬉々としてテーブルに着く
でもお母さんだけは
鐘の音を聞いて微笑んだ
鐘つきの少女は今日も生きている
その証が鐘の音だから
鐘つきの少女は今日も鐘をつく
初めは午前9時につき
次は正午きっかりに
そして午後の3時と午後の6時
最後の音は午後の9時
それは少女の生きている証
それが少女に課せられた義務
この街に生きる誰もが
時に困ることのないように
鐘の音で時を報せ
そして家族に無事を知らせる
【ある街に古くからある掟】
それはたった1つだけ
毎年その年の初めに生まれる少女
少女が10を迎えた日
少女には鐘つきの任務が与えられる
少女が鐘をつくのは10年間
20になれば返される
ただし、ひとつの例外が
文明が発展したならば
彼女は既に要らぬもの
文明が発展した時は
彼女も真に自由になるであろう
お題:つまらないことでも
『たとえ遠く離れても』
どうしてかな
どんなにつまらないことでも
楽しく笑いあえて
嫌なことがあっても
馬鹿みたいに笑って
気がついたら忘れていた
どうしてかな
隣にいない時間なんて
ほんの少しの間だと思っていたのに
こんなにも胸が痛いのは
私があなたを置き去りにしたから?
でもね忘れないで
確かにそばにいないけれど
あなたはひとりではないこと
またきっと見つかるよ
つまらないことでも笑い合える
あなたを救ってくれる人が
だから私のことは少しだけ忘れて
あなたの時間を楽しんで
いつかあなたに会えた時はまた
つまらないことで笑い合いましょう
お題:目が覚めるまでに
『儚く脆い幻を見る』
夢なら覚めないで、と
聞き覚えのあることを口走ってしまうほど
どうしようもない寂しさを覚えて
この幸せに縋ってしまった
それが偽りであったと知るのは
そう遠いことではないはずなのに
見ないふりをして今日もまた
その優しさに縋っている
この幸せと優しさを
ひとつも取りこぼさないようにしっかりと
私が目を覚ました時
きっと覚えていられるように
私が目を覚ました時
そこが本当の居場所だから
今あるものを抱きしめて
私らしく戦う糧にできるように
あと少しだけこの場所で
甘く優しい夢を見ていたい
お題:病室
『願いと祈り』
ベットで眠る私の元へ
あなたはいつも逢いに来た
私はあなたに気が付かず
言葉の一言もあげられないのに
あなたは絶えずここへ来て
ただ一言だけ告げて去る
あなたが何を残して去るのか
確認なんてできないのに
私はあなたに何を残せるのだろう
私の中の灯火が消えゆくと知ってしまった時から
あなたは何かを祈っていた
その願いを私は知らぬまま
あなたを残してゆくのでしょう
それは、私の中の灯火が消えてから知ったこと
あぁ、愛しい人
あなたの願いなど知りたくなかった
私は何も残せていないから
それは私の願いでもあるのよ
もう私の声は届かないけど
でも口は動かせるから
かつてのあなたがくれたこの願いを
次はあなたに
『どうか(私の分まで)幸せであれ』
お題:明日、もし晴れたら
『どうか、変わらない日々を』
明日、晴れるかな?
そう問いかけても
返ってくるのは曖昧な返事だけ
いつからこうなってしまったのか
私には今も分からないの
もしも明日晴れたら
あなたは笑ってくれるのかな
前はそんなことを考えたけれど
今はただ
あなたの隣にいられる幸せを
噛み締めていたい
明日、もし晴れても
私は今日と変わらない
ありふれた1日を
あなたと共に過ごすのでしょう
天気なんて気にならないくらい
あなたと過ごす日々が
かけがえのない日々なのだと
あなたが教えてくれたから