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7/11/2024, 11:18:44 AM

たったひとつのメッセージ
風に乗れない紙飛行機
下書きまでしたのに
読み返して、‪✕‬を長押し

文通をしてみたいと思うの
青い便箋に心を描くの
消しゴムも‪✕‬もいらないわ
窓を開けて
インクが乾くまで雲を眺めるの
風を受ける翼をつけたら、
ほら完成

紙にインクを滑らすとき
心の形が見える気がするの
色は少し滲んでしまったけれど
それは私の手が、心に素直だから

無機質な画面の中は
風がないものね

青い紙飛行機
その翼で、きっと、届けてくれるよね
画面にはおさまりきらない、私の心



#1件のLINE

7/10/2024, 11:33:05 AM

目が覚めたとき
遠のいていく夢の断片を手繰り寄せる時間
ホワイトパズルをはめるような虚ろのなかに
失いたくない何かがあるような気がして
言えなかったごめんなさいが
重くてまだこびりついていていて

唯一、時間を巻き戻せる世界だから
夢のようなフィクションを歩けるの
仮初の理想郷を踏んだ足は
絡みつく毛布を拒絶して
ごめんなさいが言えた私は
言えなかった卑怯な私を蹴飛ばしてくる

分かっているの
あの子には、もう会えないことを
それでも
ホワイトパズルを、諦められなくて



#目が覚めると

7/8/2024, 12:21:54 PM

深夜の、高台にある公園が好きだった
ブランコを揺らしながら、街を見渡すの
勉強、読書、通話
眠れない人、眠りたくない人
街の明かりひとつひとつに、生活が詰まっているのね
お風呂の湯気や作り置きのカレーの香りも
夜風に漂う生活の一部なのね

私の部屋の明かりは、今は消えている
少しだけ、逃げていたいの

明かりのない部屋にも
眠れない人はきっといるのに
夜の闇に紛れてしまうから
私からも見えないの

見たくないものに蓋をするために
この公園にいるのかしら

ブランコの軋む音
誰も聞かないでいて



#街の明かり

7/4/2024, 8:48:32 AM

霧がたちこめる。
白く、淡く、霞んでゆく。
周りには誰も居なくなった。

迷ってしまったのは、仲間たちではないだろう。
私が自分で道を外れて、助けを求めずに独りで歩き続けて、自分で自分の首を絞めているだけのことなのだ。

道を間違えた。
自分で選んだはずだった。
それなのに、あの人たちとは進む道が違ったのだということを、未だに受け入れられずにいる。きっともうとっくに、青空の下で光を浴びているのだろう。私一人を抜いただけの、あの仲間たちで。

人知れず茨の道を選ぶ私は、ひどく意地っ張りだ。
何だって一人でやってみせたかった。
一人で茨を切り開き、一人で濃霧を振り払ったことに、誇りを持っていたいのだ。

湿度、嫌な汗、手に付いた泥、
見えない道の先、堪える涙、それでも止めたくない足。

先が見えずとも、どれだけ遠回りでも、
いつか必ず辿り着いてみせるの。
人とは違う道筋だって、近道が分からなくたって、
時間をかけて歩き続けるの。
私なりの歩み方で見つけた、青空の下へ。



#この道の先に

2/8/2023, 10:52:52 AM

鳩が飛んでいった。

君への本当の想いは綴れずに、飛ばしてしまった。

生きていて欲しい。
私を忘れて欲しい。
笑っていて欲しい。

薄っぺらく、
上っ面だけは愛人の幸せを願う誠実な人であるような、
そんな言葉をつらつらと書き並べてしまった。

君は、どう思うのだろうね。


白い鳩の背中が、やけに目に痛い。
遠ざかる鳩を見送っていた、その時。


鳩の背中から何かが飛び出た。
白銀の羽毛に、赤い血がよく目立つ。
やがて鳩は、力が抜けたように、
地面に真っ逆さまに落ちていった。

矢に打たれたのだ。


私は我に返る。

そうだよな。
こんな戦場の真ん中で、
便りを綴り、鳩を飛ばし、その行方を悠長に眺めている
私がおかしいのだ。

君と一緒に人生を終えることが出来たら、
どんなにか良かっただろう。
君と死にたい。そんな私の我儘を許してくれる君を、
私は心の奥底で探している。

今日ほど、己の筆不精をありがたく思った日は無い。

死に際に書いた手紙でさえ、
私は綺麗事しか書き出せない。

本当の気持ちは書けず、
嘘の気持ちを書いた手紙は届かなかった。

これで良かったのだ。
泥臭い私の気持ちなど、君は知るべきじゃない。

君の中の私を崩さないように。
私の中の君を苦しませないために。

私はここで死に、平和の礎となる。

いつかまた、誰かが鳩を飛ばす時、
届くのが哀しみの手紙ではなく、
オリーブの小枝であったなら、
私も報われるだろう。



#どこにも書けないこと

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