「失恋」と聞かれて大体は自分の
過去の経験を思い出す…
けれど、よくよく考えると「失恋」させた
事だってあるはずだ…
それは相手の気持ちを拒否し傷つけた
そう言う事だ。
私の場合…
学生時代の6年間ずっと私にちょっかいを出してきた男の子がいた…
好きな子には意地悪をする…
小学生みたいな接し方をしてきた。
高校生の頃には壁ドンを仕掛けてきたり
何かと私に絡んできた…
彼が真顔で私を呼び出したのは
高校卒業の少し前…
「好きだ!付き合ってくれ!」
彼の決死の告白…
私の返事は…「絶対嘘だ!」
何度かこの会話が繰り返された
しばらくして彼はその場を去った…
ずっとからかわれてきた私は「好きだ!」
その告白を信じられなかった…
不器用な彼の本心を知ったのは
かなり後の事だった…
あれから長い月日が流れた
今更ながら申し訳ない事をしてしまった…
彼は元気にしているだろうか…
今日は日曜日…
小学生の双子も休日を満喫した
……「そろそろ9時だね」
母親の就寝前の号令がかかる
「誰が出したの?片付ける時間だよ」
双子達は個々に「僕は出してない!」
そうやって互いに責任をなすり付け合う…
私の目の前のリビングでは足の踏み場も
無い程に色々な物が散乱している。
色紙…テープ…ハサミ…
車に恐竜にブロック…よくもまあここまで
ぐちゃぐちゃに出来るもんだ…
その後もあっちがやった、こっちがやったと嘘の上塗りである。
「もう!どっちもこっちもない!さっさとやりなさい!」と母親の堪忍袋もそろそろ切れそうな様子だ…
ぼちぼちと私の出番かな…
「は〜い!全部吸い込みますよ〜!」
と、掃除機のスイッチを入れる。
おもちゃは子供の宝物で何一つ捨てる物はない…だから必死に片付け出す。
「正直」吸い込むつもりなどサラサラない
この技…何歳まで通用するだろうか?
高校生の頃は髪が命だった…
朝シャンが日課で、セット道具と言えば
当時では最先端のクルクルドライヤー
「それくらい必死に勉強すればね…」と
やや…いや…かなり呆れ顔の母の小言…
とにもかくにもバッチリ仕上げないと1日の気分に関わる!それが女子高生だ!
食べる事も諦めて、朝ご飯は抜き…
2時間目が終わった頃に売店にフルーツ
ゼリーを買いにいくのがルーティーンだ。
早朝から全力で仕上げた髪を鏡で確認し
「よし!完璧だな…」
ギリギリで完成させて駅に向うべく
自転車を立ち漕ぎする。
…ポツリ…ポツリ…ポツリ…
「嫌ぁ〜!!」曇り空から憎っくき雨…
「今日は晴れるって言ってたよね〜」と
同級生に無駄な確認を取る…
湿度と小雨の攻撃はいとも簡単に私の
力作をぐちゃぐちゃに壊していく
「梅雨」なんて大嫌いだぁ〜!
うつむき加減に憂鬱な気分で1日の
学校生活を過ごしながら、ふと母の小言を思い出す…
「それくらい必死に勉強すればね…」
ハイハイ…お母様のおっしゃる通りです(笑)
「無垢」と言うならば生まれてから
まだ日が浅い赤ちゃんたち…
清らかでまっすぐで汚れなき彼らには
私たち大人が見えない世界から
時々ベビーシッターが来るらしい…
私は、何度かそんな出来事に遭遇した
もちろん私には見えるはずもないが
それは、誰も居ない空間に突然現れる。
天井付近だったり部屋の片隅だったり…
やっと見えるようになったつぶらな瞳で
前後左右と何かを追っている…
そして、声を出して楽しそうに笑う
………不気味だ(笑)
けれど、何だかとっても幸せそうに笑う
ので、大人たちも真剣に来客を探り出す
「じいちゃんか?」「ばあちゃんか?」
いったい誰が来てるんだ?
けど確かにしっかりあやしている…
純粋無垢な彼らには、澄み切った眼差しでハッキリと見えているのだろうか…
駆け引きをしながら生きる大人たちの
曇った目にはもう何も映らないって事か
まあ、見えたら見えたで身内でも震える(笑)
美容師になろうと決めたのは9歳…
親戚に美容師が数人いたこともあり
身近に綺麗になっていく姿を目にしていた
何より、幸せそうな笑顔が幼心にも印象的で「良いなぁ〜私も髪切りたいなぁ」
そんな風に思ってその道に進んだ…
実際、手に職をつけるとはイバラの道で…
技術だけではなく、人間関係もかなり厳しくトイレに隠れて泣いた…
あれから長い長い時間が過ぎた…美容師として人として沢山の事を学んだ。
「髪を切る」それだけが仕事ではない。
土台はやはり信頼関係に尽きる…
数十年一緒に年齢を重ねてきたお客様…
時には、カウンセラーになり友人になり
安心して過ごす特別な時間…
心の内を話す事で、髪の毛と一緒に気持ちも軽くなり、わずかな時間で顔つきまで変わるのを見て自分の選択は間違ってなかったと実感出来る…
個々に幸せな気分を満喫し、笑顔で帰って頂く事で私も幸せのオーラを頂いている。
1つの事を突き詰めると、全ての職業に共通する「終わりなき旅」は私が美容師として生きていく限り永遠に続く…