太郎、まだ一緒に遊びたかった…
太郎は、ボール遊びが好きだったよね
あんなに大きかったのに、今はこんなに小さくなっちゃった…
天国に、お手紙を送るね
届いてくれるといいな…
でも太郎は字、読める、かな?
蝉の鳴き声が僕の耳を塞ぐ。
夏のジメジメとした空気が辺りを包み、
僕を現実から離れさせる。
頬を伝う汗が、虫かと思って
背筋に冷たい空気を感じてしまう。
彼女に別れを告げられた、あの日…
頭が真っ白になって、気づいた頃には
彼女は冷たくなっていた。
あの時の景色を僕は一生忘れないだろう。
…生暖かい血液が、まだ指に残っている気がする。
素敵な願い事ね!
脳天気な願い事ね
きっと叶うわ!
絶対叶うはずがない
私があなたの願いを
叶えてあげる!
面白そうだから話
ぐらいは聞いてあげる
さぁ、願い事を教えて?
さぁ、願い事を教えて?
肌に触れる風が、僕を突き放すように感じた冬の日
彼女達は僕にそう言った。
「■■■、■■■。」
僕が彼女達に願い事を伝えると、心臓が潰されるように痛くなって、僕は意識を失った。
起きた時には、朝日が昇っていて
嫌いなあいつの家が燃えていた…
ボトルメッセージって知ってる?
そうそう、あの海に流すやつね。
ここってさ〜、海行くまで電車乗らなきゃじゃん?
だから、私思いついたの!!
紙飛行機に想いを書いて飛ばすの!!
今日は風強いし、絶対上手くいくと思うんだよね〜。
ほいっ!!
あっ、紙飛行機川に不時着した。
まっ!川が私の想い受け取ったってことだよね〜!!
何事もポジティブが大事、明日も頑張ろ!
ザッブ~ン!!ザッブ~ン!!
ねぇねぇ!■■ちゃん海、行こ!!
私波の音大好きなんだよね〜、落ち着く感じがする!
そう言えば、あんなこと言ってたな…
あれから数年が経ち、彼女には何度目かの夏がきた。
彼女はいつも唐突に物を言う。
あの日だってそうだ。
あんなに海が好きだったのに、今は嫌いって言うし。
この日になると、必ずこの海岸で涙を流す…
(■■ちゃん、私あなたのこと恨んでないよ。海、誘ってくれてありがとう。初めて友達と海に行って楽しかったんだよ…だから、もうそんな顔しないで)
私の声は彼女には届かない。
どれだけ、私が大きな声を出しても
波の音でかき消されてしまう…