Ton_Ton

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11/13/2023, 8:59:54 AM


ずっと階段を登っていると、ここが何階建てだったか分からなくなったので、ふと、外を眺めたくなった。

随分昇ってきたので相当、高い位置にいるとは思う。ゴールはあと少しだと思う。

外を確認できる窓はないかと探したら、一つ扉を発見した。扉には注意書きで、こう書かれている。

――――この扉を開いてはならない。あなたは登り続けなければならない。

私は、その注意書きに酷く苛立ちを覚えた。ここには理由がないじゃないか。私が登り続けなければならない訳を書かないまま、どうして行動を指示してくるのか。

しかし、どうもその注意書きは黄色い板に太字で書かれており、無下にするには警告色が強すぎるものであった。

どうしたものかと悩んだ末、私は扉をノックしてみた。

「誰か入ってますか?」

返事があった。

「入っているのはお前だぞ」

11/11/2023, 3:02:38 PM

さて、本日の授業ではペンギンについて学びますよォ! 田中くん! ペンギンには、ある大きな特徴があります! それは何でしょう! 

あ、僕知ってますよ。ペンギンは鳥類だから翼があるのに、空を飛ぶことが出来ないってやつですよね。

ブブー! 不正解!

えっ? 違うんですか。

はい。田中くん、私が言おうとした答えを当ててしまったので不正解! くたばれ!

理不尽。

さて、田中くんのせいで今回の授業は、もうお終いです! 皆さん、田中くんに盛大な拍手をお願いします。

――――パチパチパチパチパチパチ

先生、僕、不登校になりますよ?

11/10/2023, 2:27:57 PM

良い風景を見ると鼻がムズムズする。
なんだか落ち着かなくなって、鼻が無性にムズムズする。

古臭い匂いを嗅ぐと、目がしょぼしょぼする。
その場から脱したくなって、目を開けているのが辛くなる。

美味しいものを食べると、眉間にシワがよる。
「なんだコレ、うまっ!」って頭の中で驚嘆して、眉間にシワをよせる。

嫌な気分になると、笑顔になる。
心臓がキュウと締め付けられて、笑顔を繕う。

楽しい時は笑顔になる。
言うまでもなく、笑顔になる。

月の下にいる着物の私は、団子を片手に笑顔。
この笑顔は間違いなく、あっちの笑顔だ。

11/9/2023, 2:48:45 PM

良くもここまで来たな、恥ずかしくないのか。

恥ずかしくなんてないさ。僕は君を愛している。

バカを言え、浮気をしたのはお前だ。良くも私の前に戻ってきたな、恥ずかしくないのか。

恥ずかしくないさ。僕は浮気をして気づいたんだ。僕の意識には常に君が浮かび上がる。

子供を作ったのにか。私以外の女と子供を作ったのにか。恥ずかしく無いのか、恥ずかしくないのか。

だんだん恥ずかしくなってきた。でも僕の本命は君だ。結婚しよう、指輪を用意した。

私は見たぞ。その指輪をあの女にも渡していた所を。お前が膝をついて渡していた所を。恥ずかしい嘘だぞ。

ごめんなさい。本命はあの子でした。でも君のことも好きだ。2番目に好きだ。

でもお前はもう死んでいるだろう。そうだ死んでいるだろう。私の彼氏は既に死んでいるだろう。死んでいるだろう。蘇ったのか。いや私が会いに来たのか。

僕の意識は、君の中に生きていたということだ。