一人暮らしのとき、風に当たって鳴る
風鈴の音に癒やされた。

誰もいない部屋で

チリンチリンと鳴り響く音が

喧騒を忘れさせてくれた。

今は、風鈴の音は山の中の心地よい風を
感じさせて、なんだか懐かしくなる。

浅はかに、でも、子供の頃は純粋に
夢、希望は確かにあった。

大きくなって現実に打ちのめされて

夢も希望もなくなって、

子供の頃のなりたかった自分は遠くなった。

そんな自分だけど、今は今で
誰かの笑顔に救われている。
それでいい。

僕は、自由が好き。
恋愛もお互い傷つかないように。

仕事も今日一日数回笑えたら十分。
家事はほどほどに、夫婦仲もぼちぼち。
けんかしないで、お互いの話を
さりげなくきいて。

毎日気になることなんて沢山ありすぎて

自由がいい。一人、じっと何もしない時間が
大好き。

ざわついていた胸が、静かに癒やされていく。

一人、部屋に残って頭を冷やす。

僕はいろいろ考えすぎるから。

雨音が少し強くなった。

迎えに行かなきゃ。

優しさを愛しさを忘れないように。

後悔しないように。

川沿いを何度も歩いた。

夜中、キラキラした街灯を

あなたと二人並んで、眺めてた。

何でも無い、たわいもない会話をつないで、

手を握り合った。もう、あの時の

あの道は通らない。

記憶の中でだけ。僕の中で悲しみが募るから。

もう、近づかない。