NoName

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5/4/2023, 2:17:40 PM

空にも本棚があるのか
そう気付いたのは
飛ぶことにすっかり疲れて
草原に仰向けになったときだった

邪魔な羽根はシュラフがわりに身体に巻いた

手をのばすと
微かに硬い背表紙に指が触れる

読める……のか?
いまのところ
透明なまま だが?

人差し指で引き抜くと
胸にドスンと落ちてきた一冊の本

表紙は赤くファンタジーな匂いがする
蛇がお互いの尻尾を咬んで円を描いている

確かどこかで、
これを読んだような気がする

一気に眠くなった頭を
ぼんやり過ぎる何か。

(思い出せた頃にはきっと僕はそっちに居るんだろう)
(逃げ込める居場所だって君がくれたここから)

4/30/2023, 10:30:59 AM

ローソンの裏
花の名前

番台に小銭
人肌くらいの薬湯

若い人はまず来なくて
帰りにおやすみを貰える

このくらいのが日常に

いつも、いつも
あるといい。

4/29/2023, 11:47:15 PM

台風の日
黄色い傘を持って
しとどに濡れた神社の
長い階段を登った

まだ心ごと身軽で
見えないそれに
乗れるものだと信じていた

3段いっき
ぶわり と踏み出した
綿毛のきぶん

みぞおちが笑う
あれは、それの、てのひらだった

4/26/2023, 9:17:24 PM

痛みに呻いて叫びたくなるとき
神様に懺悔したくなるのは何故だろう

痛みに善悪なんてないのに
躊躇いなく悪に仕立ててしまう

4/24/2023, 12:11:40 PM

日々 という名前だった

彼女が残した

マッチサイズの匂い。


悲しくなるたびに擦った

(いまは春で、僕は少女でもないのにな?)


正確かどうか分からない

粉々になったさよなら

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