NoName

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空にも本棚があるのか
そう気付いたのは
飛ぶことにすっかり疲れて
草原に仰向けになったときだった

邪魔な羽根はシュラフがわりに身体に巻いた

手をのばすと
微かに硬い背表紙に指が触れる

読める……のか?
いまのところ
透明なまま だが?

人差し指で引き抜くと
胸にドスンと落ちてきた一冊の本

表紙は赤くファンタジーな匂いがする
蛇がお互いの尻尾を咬んで円を描いている

確かどこかで、
これを読んだような気がする

一気に眠くなった頭を
ぼんやり過ぎる何か。

(思い出せた頃にはきっと僕はそっちに居るんだろう)
(逃げ込める居場所だって君がくれたここから)

5/4/2023, 2:17:40 PM