NoName

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8/12/2025, 12:38:42 PM

夏休みに本を借りにくる酔狂な学生など
じぶんくらいだろうと思っていたあの日

夏のおわりを口遊みながら階段を駆け上がって
古い木製のドアを開けようとしたら
後ろから生えてきた腕が先に開いた

驚いて振り向こうとしたら
やめておいてくれる?と頭上から声がする

揶揄うような穏やかな声
柑橘シャーベットの匂い

その歌は反戦歌だって知ってる?
って前にあたしに話しかけたあの声だ

まだ成仏してないんですか?と思いながら
今度は何の本の話がしたくて出てきました?と
前を向いたまま本棚をうろうろ

この本かな、と
本棚から引き抜いた文庫本に
ベタですね と笑う

彼がスパークルを歌いはじめる
(夢と知りせば覚めざらましを)




8/10/2025, 4:52:27 PM

(わんわんわんわん!)

この、小さな箱で
溺れそうになって


(わんわんわんわん!!)


身体ごと引き上げられた孤独が
警報のように喚いてる

8/9/2025, 2:01:13 PM

目を閉じる
言葉ではないそれに
安堵する

傷付けたり
嫌われたり

言葉が上手く使えなくて
見えないあなたになりたかったの
誰かを撫でる無声音のような

8/2/2025, 4:39:29 AM

君が来てくれたから
胡瓜を刻んだ
家に残ってた茄子も念入りに

もう帰らなくていいんじゃない?
そう言いながら故郷の定番夏ごはんを作る

それをまぁ、美味しそうに
にこにこ食べて
やっぱり夏はさっぱりするこれがいいよねって笑う

毎年プロポーズしているのに
旧暦の織姫彦星をもう少し楽しもうって嗜めてくる

言うけどあれすでに夫婦だからな?って言い返す

身体がないくらいで好きは簡単に死なない
なんならシェアしたっていい

言い募っても
どんなに懇願しても

どこからかお裾分けされるソレに乗って
また帰ってく

8月、どうせ僕は君を見送る

8/1/2025, 8:18:16 AM

プール底
伸ばした手だけ シュノーケル

流れてく
匂いの先だけ クラムボン

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