11/10/2024, 11:11:47 AM
十
私たちがススキだと思っているものは実はススキではないらしい。私がSNSで仕入れただけの豆知識を披露すると、君は目をまあるく見開いて、高く澄んだ声で「そうなの!?」と言った。本当は何という名前の植物なのか、私は知らなかった。たしかあの時、君が調べて教えてくれたっけ。
私が君に告白して振られてから、お互いどこか気まずくなって疎遠になってしまった。私の好きは恋だったけど、君の好きは友情だったらしい。どちらも好きに違いないのに。
秋になると毎年この記憶を思い出す。私は名前なんてなんでもいいだろって思ってたけど、君はススキじゃないあの植物をちゃんとした名前で呼びたがってた。
……そういうきっちりしたところにも、恋してたんだよな。
「ススキ」
9/3/2024, 4:06:42 AM
九
あなたのひとことが、私の心に火を灯している
歩む道の先が見えなくなっても、不安に駆られても
ちろちろと揺らぐ火は
きっといつまでも私を勇気づけましょう
「心の灯火」
8/15/2024, 2:02:02 PM
八
水面に映る月を手の椀にすくって
かあさまに見せるんだと
裸足で砂を蹴る
「夜の海」
8/7/2024, 11:53:04 AM
七
人がいつか死ぬなんて最初からわかってた
今日がその日だとは思いもしなかったけれど
運命の無情なこと
「最初から決まってた」
8/5/2024, 12:38:39 PM
六
鐘の音で目を覚ます
飛び交うおはよう、トーストの焼ける匂い
廊下を走っているのは、寝癖をつけたままなのは誰?
皆私のかわいい子どもたち
また一日が始まる
「鐘の音」