十
私たちがススキだと思っているものは実はススキではないらしい。私がSNSで仕入れただけの豆知識を披露すると、君は目をまあるく見開いて、高く澄んだ声で「そうなの!?」と言った。本当は何という名前の植物なのか、私は知らなかった。たしかあの時、君が調べて教えてくれたっけ。
私が君に告白して振られてから、お互いどこか気まずくなって疎遠になってしまった。私の好きは恋だったけど、君の好きは友情だったらしい。どちらも好きに違いないのに。
秋になると毎年この記憶を思い出す。私は名前なんてなんでもいいだろって思ってたけど、君はススキじゃないあの植物をちゃんとした名前で呼びたがってた。
……そういうきっちりしたところにも、恋してたんだよな。
「ススキ」
11/10/2024, 11:11:47 AM