【秘密の場所】
僕には秘密の場所があるんだよ!
ママやパパ、おともだちのそうたくんにだって言ってないばしょなんだ!
けど、とくべつにお兄ちゃんにだけは教えてあげる!
こっち!こっち!
そう言って弟のミツルはよく俺に人気が少なく景色が綺麗な自分の気に入った場所へ俺にだけ教えてやると連れて行ってくれる。
川の近くの洞窟、学校裏の竹林の奥にある小さな滝のある湖。
ミツルは水辺が好きだった。案内してくれる秘密の場所には必ず大きさ関係なく水辺が存在した。
水辺が好きではしゃぐミツルを見るのが好きで、気づいたら俺も水辺が好きになっていた。
ただ、そんな水辺もミツルとの大切で愛おしい記憶から、全て絶望と喪失感で上書きされてしまった。
俺がミツルから一瞬でも目を離してしまったせいでミツルは、足を滑らせそのまま流れの速い川に流されて行ってた。
引き上げられた頃にはもうミツルは体が硬直し冷たくなってしまっていた。
両親や親戚は俺を責めなかった。
いっそのこと、責められてその罪悪感を感じたまま苦しんで死にたかった。ミツルも同じくらい、いやそれ以上に苦しんで死んでやりたかった。
ただ、今ミツルに会いに行ってしまえば早すぎると怒られてしまう。それだけは避けたい。
だから寿命まで生きてすぐにミツルに辿り着いやる。ごめんな、まってろ、ミツル。にいちゃんもすぐにおいかけるからな
聞こえているかはわからないが空に向かって言っていておいた。聞こえてるといいなぁ…
【ラララ】
ラララ♪ランラン♪
楽しそうに口ずさむ声が聞こえる。
「どこから聞こえるんだ…?」
ラララ♪ラララ…♪
上か…?
上を見上げるとそこは病院だった。
病院の6階の位置の窓がちょうど空いている。
なぜだかわからないが気になった。病院の中に入って看護師さんに尋ねてみた。
「先ほど外を歩いていたら人が歌っている声が聞こえてその歌が素敵だったのでぜひ、本人に素敵な歌声だったと伝えて欲しいのですが…」
「わざわざそんなことで!ありがとうございます。つたえておきますねっ!聞こえた場所は西側と東側どちらの方面の何階でしょうか?」
「お伝えお願いします。場所は東側の6階です。」
「6階…ですか?」
「はい。6階でした」
「変ですね…」
「え?何がですか?」
「この病院には6階はないはずなんですが………」
【風が運ぶもの】
風の郵便屋さん。主な仕事は芽となる種をいろんな所へ運ぶこと。
その仕事も最近は昆虫に取られてしまった。どうやら昆虫界で郵便屋という仕事が人気職業ナンバーワンになったらしい。
少し前までは人間に知らせをする仕事が人気だったのに。
俺たちは郵便屋の仕事を取られればすることはほとんどない。他の職業はほぼボランティアに近いもの。
風にとって郵便屋は一番働き手の多い職業。他の仕事は冴えないものばかり。これを機にボランティア業でも開業するのもありかもなぁ。
【question】
なぜ、なぜ、なぜ?
わからない。どうしてあの人は私を拒むんだろう?
どうして、どうして、どうして?
察して、なんて言われても心が読める訳じゃないんだからわかる訳ないじゃん。
なんで、なんで、なんで?
なんで私はダメであの子はいいの?わからない。
人間に化けるってむずかしいんだな。
【約束】
今、俺は森の中の寂れた教会にいる。
アイツとの、約束の場所。
もし、今日この日までお互いのことを諦められなかったらここに集まろうと約束した。
あの時の俺とアイツは、立場上付き合うことなんてできない関係だったから。
その時からやっと、7年たった。俺たちの関係が許されるようになる日。
アイツが、
俺の主人じゃなくなる日。
約束の時間まであと2分。
「…アイツは、俺のことを諦めたのか」
アイツはいつも5分前行動をするやつだ。
5分前に来ていないと言うことはそういうことだろう
「俺、バカみたいだな。」
帰ろう。
そう思った矢先
「帰るの?」
____アイツの声が、聞こえた。
「…おせぇよ、、ばか」
俺は涙が止まらなかった。
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"アイツ"の性別はご想像にお任せいたします。