【ひらり】
ひらり、ひらり
頭上から落ちてきたのは桜の花だった。
「また、この季節が来たのか」
春は終わり。仲の良かったクラスもみんなばらけるから。
春は始まり。また新しいクラスに変わるから。
春は憂鬱。新しい場所でまた一から居場所を見つけないといけないから。
春は嫌い。強制的に何かになにかをしないといけないように感じてしまうから。
「…なにも変わらなければ、春を嫌いにならずに済んだのかな。」
理不尽に嫌っている自覚はあるが、それでも嫌いなものは嫌いなのだ。
【誰かしら?】
私の運命の王子様は今頃どこで何をしているのでしょうか
私はもうすぐで、18になってしまう。
お父様との約束。
18歳までに運命の相手だという人を見つけなければ、隣国の第一王子であるウェンリー様と婚姻を結ぶという約束。
ウェンリー様とは夫婦より、良き友人でありたい。
なにより、ウェンリー様も私と婚姻を結ぶことを望んでいない。
「…どういたしましょう。」
ひとり思い悩んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。
「あら、誰かしら?」
担当メイドのサフィールは執事長と面談のはずだし、この時間には普段誰も私の自室へ近寄ることはない。
「入って構いませんよ」
開かれたドアから入ってきたのは1人の青年だった。
「失礼致します。本日からお嬢様の担当執事を務めさせていただきます。レオパルド・シエルと申します。」
「____!」
直感で感じた、この人だ。私の運命の王子様。
初対面?主従関係?そんなの知ったことじゃないわ。
運命ならそれを乗り越えてこそなのよ。
「レオパルド・シエル様ね、早速だけど、お願いいいかしら?」
「えぇ、なんなりと。」
「ありがとう、じゃあ___」
"私と、結婚してくださる?"
【芽吹きのとき】
花が咲いた。
新しい命の誕生。
才能の開花。
いつか出会うその人のために今日も私たちは、
新しい種を蒔き、美しい花を咲かせる。
枯れたとしても美しく映る花を。
【あの日の温もり】
あの日の母の温もりがまだ私を縛り付けて離さない。
あの時母の温もりさえ知らなかったら。
あの日に母に抱きしめられることがなければ。
今苦しむこともなかった。
母は私に冷たい態度をとる人だった。
泣けば怒鳴られ、笑えば泣かれ、話しかければ睨まれる。
そんな生活を送っていた。
そんな生活にも慣れた頃、私が12歳になった年だった。
母がケーキを買って帰ってきて、母に抱きしめられた。なぜ抱きしめられたのかわからなかった。だが母は「ごめん、ごめんね。こんな母親でごめんね」と言い続けていた。
その数日後母は失踪した。噂では仕事で出会った客の男と駆け落ちしたそうだ。
今どこで何をしているかは見当がつかない。
それなのに私は母に抱きしめられたあの日から母の温もりを忘れられずにいる。
会えないとわかっていても無性にあの温もりを求めてしまう。
あぁ、こんなことならあんな温もりなんて知りたくなかった。教えてほしくなんてなかった。
いっそのことあの日母の手で死んでしまいたかった。
あいしてるよ、この世で一番大嫌いなまま
【cute!】
かわいいかわいいかわいい!やっぱり私の推しがこの世でいっちばんかわいい!
何してたってかわいいんだから!
踊って歌ってる姿はもちろん、ご飯を食べてる時も変顔してる時も笑ってる時も泣いてる時も温泉ではしゃぐ姿も、タクシーがなかなか捕まらなくて不機嫌になっちゃうところもぜーんぶ!かわいいの!!!
でも最近は可愛いと思えない日の方が多いんだぁ。
だぁって、私以外の女と遊んだり喋ったりしてる貴方はかわいくないもの。
まぁ、そのうち女遊びなんかやめてかわいい貴方に戻るよね!