同情なんかいらない。
あなた達は、「かわいそう」「辛いよね」「いつでも味方だから」と言いながら、何かしてくれたことはあっただろうか。
あの地獄としかいえない場所で、「これは間違っている」と訴えてくれたことはあっただろうか。
善人の面を被りたいだけか。
そんな薄っぺらな同情より、本物の濃厚な同情をもらいたい。
待ってて。
すごく時間がかかってしまったけど、駆けていくから。ようやく私は分かったの。
だから貴方はどうかそこにいて。貴方の待っている場所へと走って、伝えたいんだ。
この場所でずっとずっと待っています。
そう言ったら、貴方はすぐに帰ってこようと言っていたから。
今日もこの場所で、帰ってこないはずの貴方を、帰ってくるはずだと待ってしまう私がいるのです。
私の手を包んでくれるその手があったかくて気持ちいい。
頭をなでる時はふわっと触ってくれるのが心地良い。
隣にいるだけで安心できる。
辛い時はあなたに縋ってしまいたくなる。
でも絶対にその二文字は言わない。
言ったら溢れてしまう。それをあなたは受け止めてくれるかも分からないのに、止まらなくなってしまう。
だから私は、あなたを思う度にこの気持ちを流そうとするの。
溢れないように、いつどんな風になっても捨てられるように。
でも結局できなくて、持て余しちゃうの。
いつか、きっと溢れちゃうのにね。
「卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
部活の先輩に花束を手渡す。程よく骨張った指先が触れるのを何てことないように流して、私は微笑んだ。
「やー、でも寂しいです。これから先輩がいないでうちらの部活大丈夫なんですかね」
「大丈夫だよ、みんなほんとしっかりしてるから、ちゃんとまとまるよ。あ、来年度の文化祭で顔見せるから、頑張ってね」
「えーずっと先じゃないですか!」とふざけるついでに、そっと先輩の手の中の花束を盗み見た。
花束の中に、勿忘草を分からない程度に入れてもらった。花言葉は、『私を忘れないで』
"後輩"としてでもいい。それでもいいから、私を忘れないでいて。ずっとずっと、憶えていて。
私も、あなたを"素敵な先輩"として憶えているから。