あなたは私に、たくさんの優しさと愛をくれた。
独りでも平気だと思っていたのに、いつの間にかあなたの温もりが心地よくなっていて。こんなにも温かいものなんだと、初めて知った。
だから今度は私の番。
できないことも多いけれど。あなたみたいに、上手に伝えることは難しいけれど。
声が枯れるまで、伝えたい。あなたが私を助けてくれたみたいに。
あなたが私を暗い場所から引き上げてくれたから、私もあなたのような人になりたいと思いました。
私の、何がいけなかったの。
私を、嫌いになったの。
あなたを遠くから見つめるだけになってしまって、こんなにも苦しいなんて。
おかしいな、独りぼっちは慣れたはずなのに。
お願いだから、せめて私が話しかけたら愛想笑いでもいいから笑ってくれる?
…嘘。やっぱりそんな笑顔見ても余計虚しくなるだけだから。
すれ違ったまんまでいいわ。
憎しみは、争いしか生まないという。
争いの先には虚しさがあるという。
だから許すこと、忘れることも大切なのだという。
でも私は、あの時の心が壊れてしまった瞬間を忘れることはできない。潰れるのならば潰れてしまえと思ってしまう恐ろしい自分もいる。
忘れたくても、忘れられない。むしろ、憎んで憎んで、その先に虚しさしかなくても、許せないのだ。
それでもいい。私が進む先は、絶対に虚しさだけではないから。そしていつか振り返って、お前達を笑ってやる。
どうしてかな、上手く伝えられないのが、すごく悲しい。
こんなにも、愛しているのに。
『踊りませんか?』
テレビの画面の中で、王子様がヒロインに、吹き替えられたイケボでダンスに誘っていた。
たまたまそのタイミングで口を付けていた缶ビールが、タプンと揺れる。はあぁ、とため息をついた。
金ローで、私の好きな声優さんが昔の洋画に吹き替えをするというニュースを見て録画してみたが、ストーリーも良いし、声も良い。いつの間にか感情移入してしまって、健気なヒロインを応援していた。
一人の女として、いわゆるシンデレラストーリーというものは、幼い頃から憧れてきた。ただ大きくなってくると、自分は恋愛物語の中でいう主人公の恋敵にすらなれない友達役なのだと思うようになった。異性から愛されたことなんて一度もないし、臆病だから積極的に行動するのを恐れる。気弱だから、ずっと動けないで結局主人公の良い友達ポジションでとまってしまう。そのくせ性根はあまり良くない。
私もいつか、こんな風に迎えに来てくれる王子様と出会えるのだろうか。