ねえ、あたしびっくりしちゃった。
雨の中で泣くなんて、ドラマの中の話だと思ってたんだけど、ホントにそうなることってあるのね。
遠くに見えるあなたは、知らない女の傘に入っていって、楽しそう。女も満更じゃなさそうね。
知ってるわ。あなたは、誰にでも優しい男なんだって。そういうとこ、ホント嫌い。あなたに話しかけられたら、嬉しくなっちゃうけど、自然と可愛い笑顔になっちゃうけど、嫌いなのよ。
それとあなたの好きな雨も、荷物はかさばるし外は寒いから、あたしは大嫌いなのよ。
…ねえ、あたし、雨は大嫌いなのよ。いつまで、降るの?
拝啓、14歳の君へ
こんにちは。気分はどうですか?部活、楽しいですか?
私は4年後のあなたです。
4年後の私から見たあなたは、本当に小生意気です(笑)
でも同時に、思いっきり抱きしめたいと思います。
しんどいね。苦しいね。なんで、世界はこんなに暗くできてるんだろうね。今の私でも思う時あるもん。
そうそう、何も考えていないクラスの人達を見て、あなたはとことん見下してたよね。でも本当は、ああやって友達と笑い合えるのがすごく羨ましかったんだよね。
自分なんか一つも良いところなんてなくて、でもそう思っちゃうのも辛いから、必死にその細い腕で自分の心を守ろうとしてたよね。
ありがとう。私の心を、絶望から守ってくれてありがとう。大丈夫、周りの人達は敵じゃないよ。あなたに幸せになってほしいって願ってくれてる人、たくさんいるよ。大丈夫。世界は苦しいだけじゃないよ。不平等だけど、うんん、不平等だから、良いことも悪いこともランダムにあるんだよ。
だからどうか、あなたが生きている人生に絶望しないで。きっと大丈夫だから。 18歳の私より
あなたがそうしてほしいと言ったから。
その方が、あなたが助かると思ったから。
私は禁忌を体に宿して、印を付けたの。あなたのためにという意味の印。
でもあなたは、寧ろ私を遠ざけるようになった。私の体に付いた印から逃げるように。それは、罪悪感なの?それとも、私はもういらないの?
分からない。ただこの印が、あなたと私を繋ぎ止められるものだから。逃れられない『好』と『憎』の呪縛に、禁忌をそっと閉じ込めて。
今日も私はあなたに笑いかけるの。
さようなら、昨日の私。
泣かないで。大きくなるというのは、少し寂しいことだけど。もうあの頃の自分になれないと思うのは、切ないけれど。それでもあなたが、大きくなろうと一瞬一瞬必死に努力してくれたから、それがどれだけ尊く輝いているものか理解できたよ。その時のあなたにしかできないことを、大事にしてね。
はじめまして、明日の私。
あなたの姿はよく見えないけれど、今の私にしかできないことを、一瞬一瞬必死にするから、いつか隣に立たせてね。
そして、遠くの遠くにいる私。あなたはきっと、すごく素敵な人になってるんだろうな。どうか、できなくなったことを嘆かず、その時のあなたになったからできるようになったことをしてね。
辛いこと。
悲しいこと。
苦しいこと。
その度に流れていく涙も、流せなくてどこかに押し込めた涙も、全部全部、透明な水。
大丈夫。私の中にあるものは汚れてない。《私》という透明な色に、涙が染まってるんだから。
大丈夫。私は不幸じゃない。