私たちの命は始め、握ればすぐに潰れてしまうほど、小さい。
この世にポッと生まれた命は、大切に大切にされながら、大きく膨らんで私たちを作る。そうして作られた私たちは、豊かな社会を創る。
命を大切にしよう。
命に感謝しよう。
大抵の人間は、こんな言葉を紡ぐ。正しい。間違っている箇所なんてない。誰もが聞き慣れていることだろう。
だから、私は言わない。代わりに、これを伝えさせてほしい。
世界に目を向けよ。
そこでは、小さな命が摘まれている。
I
「I love you. 私はあなたを、愛しています」
その言葉を最後に、私の恋は終わった。
夕暮れの教室。ただ一人、私だけがここにいる。山の向こうに消えていく太陽はまるで、私の恋心の終わりを告げているようで。とても、寂しかった。
とても優しい子だった。その証拠に、さっき告白した時も、私を傷つけないように「あなたとは友達でいたい」って断ってくれた。
とても明るい子だった。人付き合いが苦手な私に、優しく手を差し伸べてくれて。遊びに誘ってくれて。だから、異性同性どちらからも人気者で。関わったら好きになってしまうとわかっていたから関わらなかったのに、彼女は、その眩しい笑顔を私に向け続けた。
だからこそ、もう、この気持ちは捨てる。
でも最後にもう一度だけ、あなたに愛を囁かせてほしい。
「I loved you. 私はあなたを…」
II
夕日の差し込む教室で、俺は見た。俺の好きな子が、女子から告白されている、その光景を。
流石、と言うべきか。やはりあの子は、周りからとても好かれている。俺の周りにも彼女が好きだという奴は山ほどいる。ライバルが多いということはわかっていたから、告白なんて、しようと思ったこともなかった。
だけどあの女子は、きっとそれを承知の上で告白したんだろう。並々ならぬ勇気が必要だったはず。その勇気すら持ち合わせていない俺は、瞬間、この恋を実らせる競争で敗北した。
「She loves you. But I love you too. 彼女は君を愛しているけど、俺も君を愛しているんだ」
そう言えたなら。
最後の最後まで気持ちを伝えられない俺は、やはり、敗北者。
スクールカースト、という言葉を、一度は聞いたことがあるでしょう。陽キャと呼ばれる生徒が上で、陰キャと呼ばれる生徒が下。学生時代、そんな、誰が決めたでもないただの感覚の中を、あなたは生きにくいと感じたことはありませんか?
陽キャはまさしく太陽のようです。では、陰キャは?太陽に照らされてできる影でしょうか?
いいえ。陽キャも陰キャも太陽なのです。ただ、その眩いほどの輝きを放つ場所が違うだけ。誰だって、個の放つ太陽光を誰かに注いでいる。家族、友人、動物、植物。その全ては地球と言い換えることができるでしょう。その地球は、太陽がなければ生きていけません。
人は誰しもが太陽のような存在。その中で生きにくいと感じることはないし、陰キャだからと、自信をなくすことも恥じることもありません。陽キャだからと、常にみんなの太陽である必要はありません。燃え尽きてしまわないように、あなたの太陽に縋ってみるのです。
あなたは誰かの太陽。そして、あなたは誰かの地球。
太陽のように暖かく力強い、それが人間なのです。
たくさんの経験を積んで、たくさんの努力をした人間は、その先でもまだ、自分をさらなる境地へ導くための道を探して、ひたすらに進む。だが少し、寄り道をしてみるのも良いだろう。
寄り道は人を成長させることもある。そこでしか手に入らないもの、見ることのできないもの。すぐには自分を成長させない0の道。そこで手に入れた0は、1を足せば1になり、2を足せば2になる。
だからこそ、そこで人の最高成長点が変わるのだ。
0からの挑戦状。それを受けた者即ち、最も成長する者である。