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 I

「I love you. 私はあなたを、愛しています」

その言葉を最後に、私の恋は終わった。

夕暮れの教室。ただ一人、私だけがここにいる。山の向こうに消えていく太陽はまるで、私の恋心の終わりを告げているようで。とても、寂しかった。

とても優しい子だった。その証拠に、さっき告白した時も、私を傷つけないように「あなたとは友達でいたい」って断ってくれた。

とても明るい子だった。人付き合いが苦手な私に、優しく手を差し伸べてくれて。遊びに誘ってくれて。だから、異性同性どちらからも人気者で。関わったら好きになってしまうとわかっていたから関わらなかったのに、彼女は、その眩しい笑顔を私に向け続けた。

だからこそ、もう、この気持ちは捨てる。
でも最後にもう一度だけ、あなたに愛を囁かせてほしい。

「I loved you. 私はあなたを…」




 II

夕日の差し込む教室で、俺は見た。俺の好きな子が、女子から告白されている、その光景を。

流石、と言うべきか。やはりあの子は、周りからとても好かれている。俺の周りにも彼女が好きだという奴は山ほどいる。ライバルが多いということはわかっていたから、告白なんて、しようと思ったこともなかった。

だけどあの女子は、きっとそれを承知の上で告白したんだろう。並々ならぬ勇気が必要だったはず。その勇気すら持ち合わせていない俺は、瞬間、この恋を実らせる競争で敗北した。

「She loves you. But I love you too. 彼女は君を愛しているけど、俺も君を愛しているんだ」

そう言えたなら。

最後の最後まで気持ちを伝えられない俺は、やはり、敗北者。

2/23/2023, 11:25:13 AM