いつも降りるはずの駅を通りすぎ、ホームが遠くなっていく。これからどこに向かうんだろうか、なんて心の内は期待と嬉しさで祭り状態だ。
今日は休日。普段なら何もせず一日を終えるのだが、ふと、どこか知らない場所に行ってみたいと思ったのだ。昼間に見たドキュメンタリーのせいかもしれない。思い立つと身体はすぐに動き出し準備を始めた。久しぶりに触ったカメラと軽食を持ち、いつもは憂鬱な気分で開けるドアを押した。
作成中。
--渡り鳥
平日の朝、今日もまた俺は職場に向けて足を早める。毎朝通るこの道に、いつもと同じ顔と
─小さな幸せ お題保存
ーみつめられると 題名保存
ーないものねだり お題保存
生まれた時からずっと一緒の可愛い双子の妹。
何をするにもどこに行くにも一緒だった。
お互いのことはお互いが一番よく知っていた。
だけど、妹がただ一つ知らないことがある。
それは私が嘘つきだということ。
いつからだろう。
素直な気持ちを隠すようになったのは。
嘘で自分を偽るようになったのは。
自分のことが嫌いになったのは。
可愛い妹の眩しい笑顔を見ながら、過去を辿る。
そうだ、あれは5歳の誕生日。
いちごがたっぷりの白いショートケーキ。チョコのプレートにはあの頃好きだった幼児向けアニメのピンク色の女の子。
「あなたたちが好きなものでいっぱいにしたのよ」
そう言って笑う母は、妹と同じ笑顔だった。
「おかあさん ありがとぉ!」
嬉しいね、と言わんばかりの顔で私を見る妹。
その笑顔を壊さないように笑って見せた。
チョコレートケーキが好きだった。
水色の女の子が好きだった。
いちごたっぷりのショートケーキも、ピンク色の女の子も好きじゃないのに。
そんな気持ちを隠して精一杯笑った。
「これだぁいすきなんだぁ!」
あれから私は嘘つきになった。
ずっとずっと全てを隠して生きてきた。
それは今も変わらない。
舞い散る桜より紅くした頬を隠しながら、私の好きな人は言った。
「いつか言おうと思ってたけど、言い出せなくて…結局最後になっちまった。お前のことがずっと好きだった。俺と付き合ってほしい。」
私もずっと好きだった。あなたと手を繋いで歩めたら、と何度も考えていた。
だけど、それは妹も同じだった。
彼を見るその瞳は、あの頃と同じキラキラしていた。
だから私は言うんだ。
「ごめんね…あなたのこと好きじゃない」
彼に背を向け歩き出す。
一歩足を踏み出すごとに頬に伝う雫。
好きじゃない。好きじゃないのに。
「…っ……大好きなのに…っ」
溢れ出す気持ちを擦り紅くなった瞳は、大嫌いないちごと同じ色をしていた。
ー好きじゃないのに FIN.