【半袖】
夏だ。半袖の季節だ。
俺は誰にも言ったことはないが、二の腕フェチだ。
だから、夏が好きだ。
大好きなあの子の制服の半袖から伸びる少し白い二の腕なんて目に入った日には、天にも昇る気持ちになれる。
眩しい二の腕だ。適度に筋肉と脂肪がついていて、実に触り心地が良さそうだ。
俺がもし、一昔前の漫画の登場人物だったなら、鼻血を吹いてぶっ倒れているだろう。
それだけ、あの子の二の腕は魅力的なのだ。
俺が思わず鼻をおさえると、隣にいた友人が怪訝そうな顔をして俺を見て、
「お前何してんの?」
ときいてくる。
「何でもない。心配するな、大丈夫だ」
と俺は言った。
「いや、絶対何でもなくないし大丈夫じゃないだろ。……特に頭が」
何か最後にポツリと辛辣な言葉を呟かれた気がしたが、俺は無視する。
ああ、二の腕、バンザイ!半袖の季節、ありがとう!
【もしも過去へと行けるなら】
戻りたい時間が多すぎて、どの過去に行くか選べないなあ。
それに、戻ったところで過去が変えられるとも限らないから、過去になんて行けないほうがいいかも。
期待してダメだったらつらいもの。
ただ、過去の誰かの生きてる姿をもう一度この目で見られるなら、それは嬉しいな。
今もまあまあ、何とかやれてるから、これで満足しとくのが一番いい気もするけどね。
【True Love】
真実の愛ってなんだろう。
揺らがないこと?
たくさん甘やかすこと?
厳しいこともその人の為を思って口に出せること?
何年生きてもこの問いの答えはなかなか出せない。
居てくれるだけでいいと思うことも愛なのかな。
死ぬその瞬間には、真実の愛がなんなのか、答えを出せているだろうか。
【またいつか】
お空の星になってしまったあなた。
私がそちらにいくのはだいぶ先になりそうだけれど、待っててね。
そしてまたいつか、いつもみたいにおしゃべりしましょ。
大好きよ、あなた。
あなたは、太陽みたいな人だった。
周りを明るくして皆に慕われて。
私もあなたに照らされる一人だった。
あなたを喪った痛みにもがきながら、思うの。
私もあなたみたいになりたいって。
今からでも、私でも、なれるかな。
私はこれからずっと、あなたっていう光の星を追いかけて、届こうと手を伸ばして、生きていくよ。
どうか見守っていて。
【星を追いかけて】
大切な人を亡くした。私は胸が引き裂かれるような絶望に支配されているのに、世界はいつものように回っている。
あの人が亡くなって初めての朝。眩しく美しい朝だった。私はそれが悲しかった。
あの人が亡くなって2日目。早くもこぼれ落ちていく記憶の欠片を慌ててかき集めようと、もがく。あの人の面影がどんどん遠ざかっていく。それがどうしょうもなく寂しくて、悲しい。
あの人がいない日を一日一日重ねていく。記憶はどんどんぼやけていく。あの時どんな表情だったか、どんな声だったか、わからなくなっていく。
それでも、一つだけ確かに覚えていることがあった。それは、あの人が私を愛していてくれたこと。
私があの人を支えているのだと思っていた。でも、違った。あの人の存在に、その愛情に、私はずっと支えられていた。
今はまだ黒い絶望が私の胸を締め付けて苦しい。それでも、あの人の後を追いたいとは思わなかった。むしろ、あの人が生きられなかったその先を、私がしっかり生きなければ、と思った。
だから私は、今を生きる。絶望の中でも、どんなにもがき苦しんだとしても。あの人がいない世界で、私は生きていく。
【今を生きる】