ミキミヤ

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1/25/2025, 8:33:23 AM

「俺、全然大丈夫だよ、母さん」

そう言う息子の目の下にはクマがある。この子には心配をかけて、いろいろと無理をさせている。
私が何度それを謝っても、この子はいつも大丈夫としか言わない。病床の私に余計な心配をかけまいと吐く、ヘタクソでやさしい嘘。私にはそれがひどく痛くて、あたたかくて、つらかった。

1/24/2025, 9:10:52 AM

瞳をとじて 後日書きます

1/23/2025, 4:59:22 AM

『誕生日プレゼント』『クリスマスプレゼント』『バレンタインチョコ』……機会ある度に贈り物をする。それはアクセサリーだったり趣味のものだったりチョコレートだったりするわけだけれど、それら物たちに込めた私の想いは、あなたにはわからないまま。わかってほしいと思ってるわけじゃないから、これでいい。昔そう決めたんだ。
この気持ちも、あなたへの贈り物。受け取らなくていいから、この想いを込めることだけは、どうか許してほしい。

1/22/2025, 8:20:28 AM

羅針盤なんてなくたって、ちゃんと前を向いて正しい道をここまで進んできたと思ってた。何にも頼らず、自分の力で歩けていると、そう思ってた。
でも、よくよく振り返ってみれば、誰かの言葉や行動が、私の背中を押したことが何度もあって。誰かのおかげで選び取れた道も確かにあって。私は無意識に、他の誰かを羅針盤にして、正しいと信じる道を進んで来られたたんだなあと思う。ここまでの私の道のりは、独りじゃなかったんだなあ。そう思ったらまた、前へ向かう勇気が湧いてきた。

1/21/2025, 6:30:34 AM

俺は勇者だ。一人きりで旅する勇者だ。勇者と言えば旅の仲間がいるイメージがあるかもしれないが、俺は仲間が居なくても十分強いし、仲間は作らない主義なのだ。

昨日、俺は、花の都と呼ばれる街で悪行を働いていた魔物を成敗した。今日、俺はこの街を出て、魔物に虐げられ、より過酷な環境にある人達を助けに行く。これからずっと、いつか魔王城にたどり着いて魔王を討伐するその日まで、光ある明日を信じ、それに向かって歩いていく。それが、俺の生き方だ。

「勇者様!その傷でどこに行かれるつもりですか!」

後ろから声がする。傷――昨日の魔物との戦闘で負った傷のことか。確かにまだ治りきってはいないが、既に血は止まり、塞がりかかっている。俺は回復力が他人より高いのだ。体力は回復しきってはいないが、これくらい、戦闘の支障にはならない。

「待ってください、勇者様!そんな体で旅を続けるなんて、正気じゃないですよ……!」

正気じゃない、か。単身で魔王を倒そうなんて正気じゃないって、旅に出たとき村の皆に言われたな。それでも俺は確信してたんだ。魔王を倒すことが俺の運命なのだと。

後ろから俺を追っていた声の主が、ついに俺に追いついて、腰辺りに飛びついた。俺は、強制的に歩みを止めさせられる。

「光ある明日に向かって歩く、素晴らしいお志です。でも、たまには今日に立ち止まって、休んだって誰も貴方を責めません。どうか、貴方を心配する私のために、今日ここで立ち止まり、休んでいってくださいまし」

そう言う彼女は泣いていた。泣きながら、強い眼差しで、俺を見ていた。俺を絶対に先に進ませないぞ、という気概を感じる。もちろん俺は、どれほど力が籠もっていようと、この子の細腕など簡単に振りほどける。それなのに、その濡れた力強い瞳を見ていたら、その気が起きなくなってしまった。とたん、体がずんと重く感じる。俺は、とてつもなく疲れている。それを今、こうして立ち止まって初めて、俺は自覚した。

「わかって、くださいましたか。ではこちらへ。お部屋の用意はしてありますから」

彼女は安堵したように涙を拭って、俺の片手をとって街の中へと導いていく。俺は重い体を引きずってそれに続いた。


いい湯をもらった。いい部屋でいい布団でたくさん休ませてもらった。食事はみんなおいしかった。どれも、ここしばらくの旅では得られなかった安らぎだった。
明日に向かって歩く、その信念は変わらない。でも、突き進み続けるばかりでなく、ごくたまに立ち止まるくらいはいいのかもしれないと、俺は少し考えを変えた。

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