絶えて桜の

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6/3/2024, 11:52:09 AM

2【失恋】

君と初めての映画。

高揚感からついラブストーリーを選んでしまったが、失恋ものだった。


僕は過去を思い出した。


火薬の匂い、君を照らす花、影は二つ。
“愛してる”と詠む唇、頬伝う指、僕の涙。

失恋を知ったあの日に君との来世を願った。


映画を見る。
隣にはポップコーンを食べる君がいる。

今世はきっと幸せだ。

失恋なんてするものか。

6/2/2024, 1:31:02 PM

2【正直】

あ。

君だ。

分かってしまったんだ、直感的に。


夏の匂いに溶け出す淡いシャンプーの匂い。
夏服の軽いスカートと走る海辺。
七月の青い海と花火大会のチラシ。

君だ。

僕は君に出会うために生まれ変わったんだ。

信じてもらえないかもしれないけど、君には伝えないといけない。

ただ、正直に。

君に、真っ直ぐに。


「また会えたね。」

あぁ。生まれ変わっても君は君だ。

また君が彼から花火大会に誘われる前に、僕が君のカレンダーに書かれたい。


「八月の花火、一緒に行かない?」

僕の正直な気持ち。
君の真っ直ぐな眼差し。

夏はまだ終わらない。

6/1/2024, 10:55:27 AM

1【梅雨】

梅雨空はどうやら僕のことが嫌いらしい。
君に会いたいのに会うことができない。


いつか見た君の姿は夏の主役のようだった。
ならば梅雨は舞台袖だろうか。

夏の終わり、花火。
あれから10年たった今でも彼と花火を見るのか。

その前に一度、君に会いたい。

あともう一度だけ。


とはいえ、それでは舞台の悪役だ。
僕は君の人生になりたい。

今回ではどうやら駄目なようだ。

悪役のカーテンコールは今なのか。


梅雨空が明けた。
光が差し込む。
幕が上がる。

僕は上がる。

そして、



――――――生まれ変わる。

5/31/2024, 1:10:04 PM

1【無垢】

君は白百合。無垢な白百合。
八月の入道雲にも、二月の雪化粧にも負けないほど儚くて美しい。
僕は到底近づけない。君は眩しい。

記憶の糸を解き辿ると、そこには君がいた。
七月の波打ち際の君。
八月の花火の下の君。

でも九月の君はいない。

君にはもう僕が見えない。
透明な僕に記憶は無い。

きっと今頃彼と―――――。


なんて考えてみてはまた一人。

無垢な君に触れる権利なんて端から無かったんだ。
白百合にとっては濁りすぎてる、オオバコの記憶を植えてしまったようだ。
でも残ってほしい。
君の足跡に僕はいたい。


君の来世で君の人生になりたい。

5/31/2024, 9:35:44 AM

1【終わらない旅】

果てしなく続く海。
どこまでも高い雲。
コバルトブルーの絵の具をパレットに出した原色のような青空は僕の心を奪ってしまった。

七月の君は少し遠い。
波を追いかけて走って、濡れたローファーを砂浜に投げ捨てる。
そんな君をただ見ているだけ。

八月の君は茜色。
夏が終わる焦燥感が汗と混じり涙となって流れていく。
君はこの夏の最適解が分かったか?
僕は君を追いかけた。それが最適解だ。
君は、

きみは、

彼と過ごした夏が最適解か。


次の夏もまた君を追う。
旅は終わらない。

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