沸騰しかけた頭に木枯らしをひとつ。
カステラの裏についてるザラメと共にあるペリペリ。。あれを美しく剥がす自信がいつまで経っても湧いてくる気がしない。ザラメと共に剥がしてしまいそうで怖いんだ。怖い。自信がない。カステラを目の前にするといつもこうだ。カステラを上手く避けてきた人生だった。。苦手だから丸々1個差し出すと喜ばれる食べ物であったことからカステラをあげると喜ばれたのだ。幸か不幸か嫌いなものから逃げるために行なった行為が結果的に自身の株を上げてしまい旨みを知ってしまったのだ。いつかは向き合わないと、そう思う内に大人になった私は今や教鞭を取る立場。生徒の模範となるべくカステラの一つや二つ、美しく裏のペリペリを剥がしてこそ、とは言えども私も人だ。無理して裏のペリペリと葛藤してまでカステラなんて食べれなくて良い。いずれ溢れんばかりの自信が芽吹いた時にカステラは食べればいい。教師としての自分を捩じ伏せてしまうほどに幼少期から育み膿み逃げ続けたカステラへの畏怖。だが人生には避けては通れない試練がつきもの。カステラは私の前に現れた。地域住民からの行事参加によるお礼としてカステラを頂いた上に職員一同ではなく行事に参加したクラスの生徒に食べさせようという校長の粋な計らいにより私のクラスにやってきた。職員一同なら教頭あたりにあげて仕舞えば良かったものの40人いる生徒の中から1人に差し出すことは贔屓と捉えかねられない。じゃんけんも考えたが時間の余裕はない。アレルギーや宗教上の理由も過去の行いから推測するに道理が通らない。何か理由を探そうと教室を見渡すとペリペリを剥がす生徒の姿があちらこちらで見かけられた。目を覆いたくなるほどの光景だが生徒の勇姿として見届けることを心に決めた。クラスのムードメーカー的存在の斉藤はペリペリにほとんどザラメが付いていた。心臓がヒュンと縮む感覚を覚えたのも束の間、斉藤は一口で食べ口いっぱいのカステラをこれでもかと幸せそうな表情で頬張った。学級委員長の三谷はペリペリについたザラメを上手くこそいで食べた。時田も加藤も吉岡も山口もペリペリを各々の剥がし方で奮闘していた。言い訳ばかり探した自分が情けなく思えた。カステラのペリペリを後回しに後回しにとしている私は生徒に後回しにするなと偉そうに言っている。いつも模範であろうと勤めた私の生徒たち。彼らのカステラを食べる姿は私の言葉を私自身に投げ返すようだった。目を下にやると教卓に似つかわしく無いカステラがポツリ。試されているようだ。教鞭を取る立場として向き合わなければならない。カステラのペリペリを剥がす。そのことから逃げてきた人生。いつものように手は震えるが幾度も上がってきた教壇の上、心は落ち着いている。
「ペリペリ」
何かが剥がれた音がした。
ぼぼぼ僕の好きな歌の歌詞です。
この世界は、驚く程に輝いていた。
この世界には、たくさんの輝きがあった。
ひとりぼっちも悪くないと言い聞かせ
よわよわしく光る僕は、ホコリにすらなれなかった。
フワフワと宙を舞う姿に自由を感じる。
光を透かす軽やかさは何故か地面に影をうつす。
見上げる僕は、地面に足を着いたまま
重々しく世界を壊す。
だけどそれでいい。
壊れ方は僕らしかった。
光を透かす影は黒く、僕の影は虹色だった。
叩き落とされ壊されて
消え去るのは一瞬で
それでも世界を見て見たくて
高く高くと飛び立った。
誰かが僕を作って、誰かが僕を壊した。
輝きたい日はとおに過ぎた。
居場所のないこの世界を、愛するには不十分。
僕は所詮、不純物。
だけどそれでいい。僕はそれが心地いい。
輝き方はわからない。なのに全てが僕だった。
光を透かす影は黒く、僕の影は虹色だった。
「僕はしゃぼん玉。」
「揺れる。」
どうして?Doして?
あの人は「ずっとこのまま」と笑った。
焼け野原の中にポツンと残った途端屋根の下で自分も怖いくせに強く手を握ってくれて、何だか久しぶりに安心して空を見た気がした。嬉しそうにプロポーズの日を茶化しながら話す祖母の姿を忘れられないんだと、祖父は看護師さんにでも話すように僕に話してくれた。