箱庭メリィ

Open App
8/1/2025, 9:45:19 AM

太陽に反射した君の素肌が眩しくて
僕はいつも目を奪われてしまう

真っ赤になって黒くはならないと嘆く君は
それでも日除けをすることもなく
半袖からミニスカートから
惜しげもなく肌をさらしている

日の下にいるはずなのに
全然焼けない白い肌は
僕にはとても眩しくて
目のやり場に困ってしまう


/8/1『眩しくて』



ドクドクと脈打つ心臓は、まるで全力で走った後のようだった。

「どうしたの、そんな顔して。怖いよ?」

クラスメイトの佐々木さんが言う。
今日、彼女に誘われて、オカルト研究会の課外活動として夜の学校に集まった。
今は二手に分かれて学校の七不思議を解明中だった。
本当は僕は、今日ここに来たくなかった。オカルト研究会には名前を貸しているだけの幽霊部員だし、オカルトに興味もないからだ。
だが、少し気になっている佐々木さんが、夜の学校で一人になるのは危なっかしくて見ていられなかったから、つい誘いに乗ってしまった。

(ダメだ、耐えろ。耐えろ……!)

僕は後悔していた。
とある教室で佐々木さんと二人きり。ドキドキしている。
心音が上がっていく。

(彼女に、見られたくないな……)

でもそれは、淡い恋のせいではなかった。
僕たちのいる2階の教室の窓の外に、大きな満月がぽっかりと浮かんでいたからだ。
グルグルと喉の奥が鳴る。

(あぁ、どうしよう……。止められない)

必死に堪えるも、僕の体には動物特有の硬い毛が生え、爪が鋭くなり始めた。

「大上くん?どうしたの?」

僕の異変に気付いた彼女が声をかけてくれるが、僕にはそれに答える余裕はもうない。
耳が獣の大きなものに変貌し、顔が変形していく。ズキズキと変形に伴い痛みが僕を襲う。

「キ、キャァァァァ!!」

暗がりであればよかったものの、満月の今日は、教室に隠れる影や場所などない。

佐々木さんは、狼男に変身した僕を見て、悲鳴を上げて教室を飛び出していってしまった。

あとには、ぽつねんと狼になった僕だけが佇んでいた。


/7/31『熱い鼓動』




「ねぇ、結婚しよ?」
「いま、いう……っ?」

愛しくて愛しくて、愛しすぎるから。
思った瞬間に言ったタイミングは、君とひとつになった時だった。

「タイミングを考えてよ!」
「だって、今(あのとき)だと思ったし」

終わった後に余韻も何もなく、君に頭を叩かれた。

「で、返事は?」
「こんなこと許してる時点でわかるでしょ!考えてよね!」


/7/30『タイミング』

7/28/2025, 3:44:37 PM

「虹の始まりって、どこからなんだろうね?」

ある時君が言った。

「そんなのどこかからでしょ。空に浮かんでるものなんだから、始まりなんて分かるわけないじゃない」
「えぇ、冷たいなぁ〜」

私は素っ気なく返した。当時はそのように思っていたからだ。君はそんな私を気にする様子でもなく、けたけたと笑っていた。

思えば君は突拍子もないことを言う人だった。
以前も同じように「ドーナツの穴って何で空いてるんだろう?」なんて言っていた。

付き合っていたわけではない。
ただ当たり前のように隣にいた、大切な友人だった。


そんな当たり前が崩壊したのが、一週間前のこと。
突然君がいなくなってから、私はその存在をまざまざと痛感していた。
私は今、君のいない日常を空っぽの心で過ごしている。
『虹の始まり』なんてファンタジーなことを言う君の思考を、今なら少しは理解できるのかもしれない。

「虹のはじまり。君がいなくなったここなんじゃないの?」

電柱の下に花を供える。
交通事故だった。飲酒による居眠り運転の車に轢かれ、君はあっという間にいなくなってしまった。
あの日は、飲みに誘ったのを君が断った日だった。妹の誕生日祝いがあるから、と楽しそうに手を振る君の姿が、脳裏に焼き付いている。
そういえば、ペットが死んだら「虹の橋を渡る」という表現があるという。

「人間なら天使の梯子じゃないかって、君なら言いそうだね」

私は膝を折って手を合わせた。

(天使の梯子でも虹の橋でもいい。君があちらで幸せに暮らしているのなら)

天国なんて存在、空想上の物語の中でしか信じなかった私が、今、心から君のために祈っている。

(君の思考に染まったのに、理解してくれる君がいないんじゃ意味がないじゃない。私はこの不思議な考え方を誰と共有すればいいの?)

私はこれから虹を見る度に、虹の始まりを探してしまうに違いない。


/7/29『虹のはじまりを探して』

7/28/2025, 8:45:45 AM

君がいれば
私は灼熱地獄でも構わないのに

君がいるから
私の心は乾きっぱなし

早く水を与えてくれないと
サボテンみたいに強くないんだから

私のオアシスは
あんなにも遠く手が届かない


/7/28『オアシス』

7/27/2025, 9:20:48 AM

マグカップの底に沈んだ
コーヒーを飲んだ後の砂糖

茶色く滲んだ
溶け残ったそれは
私の後悔の跡

きみは気づかないまま


/7/27『涙の跡』

7/26/2025, 9:32:22 AM

ちらりと覗く白い腕が
夏の到来を知らせる

日焼け止めを塗った腕が
反射する光は

太陽のまぶしさを
そのまま表したみたいだ


/7/26『半袖』

Next