箱庭メリィ

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7/28/2025, 3:44:37 PM

「虹の始まりって、どこからなんだろうね?」

ある時君が言った。

「そんなのどこかからでしょ。空に浮かんでるものなんだから、始まりなんて分かるわけないじゃない」
「えぇ、冷たいなぁ〜」

私は素っ気なく返した。当時はそのように思っていたからだ。君はそんな私を気にする様子でもなく、けたけたと笑っていた。

思えば君は突拍子もないことを言う人だった。
以前も同じように「ドーナツの穴って何で空いてるんだろう?」なんて言っていた。

付き合っていたわけではない。
ただ当たり前のように隣にいた、大切な友人だった。


そんな当たり前が崩壊したのが、一週間前のこと。
突然君がいなくなってから、私はその存在をまざまざと痛感していた。
私は今、君のいない日常を空っぽの心で過ごしている。
『虹の始まり』なんてファンタジーなことを言う君の思考を、今なら少しは理解できるのかもしれない。

「虹のはじまり。君がいなくなったここなんじゃないの?」

電柱の下に花を供える。
交通事故だった。飲酒による居眠り運転の車に轢かれ、君はあっという間にいなくなってしまった。
あの日は、飲みに誘ったのを君が断った日だった。妹の誕生日祝いがあるから、と楽しそうに手を振る君の姿が、脳裏に焼き付いている。
そういえば、ペットが死んだら「虹の橋を渡る」という表現があるという。

「人間なら天使の梯子じゃないかって、君なら言いそうだね」

私は膝を折って手を合わせた。

(天使の梯子でも虹の橋でもいい。君があちらで幸せに暮らしているのなら)

天国なんて存在、空想上の物語の中でしか信じなかった私が、今、心から君のために祈っている。

(君の思考に染まったのに、理解してくれる君がいないんじゃ意味がないじゃない。私はこの不思議な考え方を誰と共有すればいいの?)

私はこれから虹を見る度に、虹の始まりを探してしまうに違いない。


/7/29『虹のはじまりを探して』

7/28/2025, 8:45:45 AM

君がいれば
私は灼熱地獄でも構わないのに

君がいるから
私の心は乾きっぱなし

早く水を与えてくれないと
サボテンみたいに強くないんだから

私のオアシスは
あんなにも遠く手が届かない


/7/28『オアシス』

7/27/2025, 9:20:48 AM

マグカップの底に沈んだ
コーヒーを飲んだ後の砂糖

茶色く滲んだ
溶け残ったそれは
私の後悔の跡

きみは気づかないまま


/7/27『涙の跡』

7/26/2025, 9:32:22 AM

ちらりと覗く白い腕が
夏の到来を知らせる

日焼け止めを塗った腕が
反射する光は

太陽のまぶしさを
そのまま表したみたいだ


/7/26『半袖』

7/25/2025, 9:21:06 AM

もしも過去へと行けるなら
いくつもの分岐点をやり直したい

でも記憶を持っていけないのなら
私はまた同じ選択を繰り返すのだろう


/7/25『もしも過去へと行けるなら』

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