暑さを積み上げたような白い入道雲
空をたくさん吸ったような青い風
自転車の荷台は
君のために空けておく
夏の訪れは青春の訪れ
7/5『青い風』
海でもいい
山でもいい
電車に乗ってコトコト揺られたり
ドライブがてらハンドルを握って
誰にも縛られず自由に寄り道してみたり
誰にも邪魔されずぼーっと留まってみたり
心を拘束されることのなく
どこか遠くへ行きたい
/7/4『遠くへ行きたい』
『僕の力をクリスタルにこめたよ。身に宿せば世界一の魔法使いも夢じゃないさ!』
どこかに隠したから探しにおいで、と世界各国に挑戦状を出し、その天才少年は行方をくらませた。
その姿は、やれ北の国で見た、やれ西の森で見たなどと伝聞は聞くが、実際に見た人の話しは聞かない。
(金一万Gなんて目じゃねぇくらいの大財産だってのに、モノは愚か元所有者さえも見つからねぇなんて。みんな血眼になって探してらぁ)
とある酒場で酒を片手に、男は肘をつきながら1Gコインを指で弾く。
(俺も“夢”を当てて一財産築きたいねぇ)
ほろ酔いの頭で夢物語を描いていると、酒場の窓から見える森で何か光った気がした。
「ん?」
見間違いかと思い、再度目を凝らして見たが、しばらく経っても何も見えない。
(何か反射したんだろ)
気のせいだったと思い直し、本日5杯目の酒を通りがかった店員の女に頼む。
酒を待っている間、手持ち無沙汰にコインで遊びながら窓の外を眺めていると、先ほどと同じ光が見えた。
また気のせいかと思ったが、今度はすぐにもう一度光った。
(おいおい、気のせいでも反射でもねぇ、何か光ったぞ。これは大昔に見た漫画みたいに……もしかすると、もしかするか!?)
お待たせしました、と酒を持ってきた店員の手ごと持ち手を掴まん勢いで酒をあおり飲み、いささかふらついた足元を気合で立たせる。
そのまま支払いを済ませ、明かりも持たずに、すぐさま光の見えた森の奥へ急いだ。
(もしかすると、もしかすると――大金持ち!?いや、大魔法使い?俺、剣士だけど)
期待に胸を膨らませながら、男は反射した光を例のクリスタルだと夢見て歩を進めた。
夜の一人歩きは危険だと、冒険者の誰もが知る森の中へ――。
/7/3『クリスタル』
太陽が照り返すアスファルト
昆虫が耕す土
打ち水をした瞬間に蒸発する水
早朝の既に起きている自然が聞こえる森林
昼間の陽炎が焼くコンクリ地面
夜が遅くくる白い月の昇る群青
かすかに香る夏の匂い
/7/2『夏の匂い』
朝起きて。目が覚めて。
僕はクマではないけれど、ぼんやりと体を起こす。
ゆうべ見た夢は、体を起こした瞬間に消えてしまった。
(面白い夢だったと思うんだけどな)
意識の端にすがりつくまどろみの残滓を払いのけるように、僕はカーテンを開けた。
布がレールを動く音と共に入る朝陽。
まぶしさに目をすがめつつ、誰にともなく朝の挨拶をした。
「おはよう」
/7/1『カーテン』
ざぱんっ。
プールの飛び込み台を背面から飛び込んだ。
怖さは一瞬。痛みは数秒。
水面にライトがにじんでいる。
ゆらゆらとまぶしいライトが揺らめくのを見ながら、体を浸水させていく。
深く深く。
淡い水色は青色へ。
(これが海ならば、ずっと沈んで、闇に溶けてしまえるのだろうか)
/6/30『青く深く』