昼の音をすべて吸いきってしまったような空
それぞれの音が小さく囁くように瞬いている
「ただいま」
「おはよう」
「今日もおつかれさま」
「明日ね、遠足があるんだ」
「わたしのパジャマ知らない?」
「いってらっしゃい」
「昨日の話考えてくれた?」
吸い上げた音をチカチカと静かに
君だけにわかるようにささやく
「ぼくはここだよ」
ささやかなざわめきにまぎれて
かすかな光を放ち続ける
(きみが見つけてくれるまで)
/『真夜中』
愛があれば、何でもできる
たとえ崖から飛び降りろと
君に言われたって
喜んで飛んでみせるよ
もちろん死ぬことだって
君のためなら怖くない
愛があってもできないことは
たったひとつくらいではないかな?
来世もまた、君のそばに生まれ変わると
約束すること
/『愛があれば何でもできる?』
あの時ああしていれば――
後悔はたくさんある
私の中で今でも燻っていることは
あの時相手を殴らなかったこと
殴ってさえいれば
泣き寝入りすることも
その後もやもやが続くこともなかったのに
理不尽に負けてもやもやするくらいなら、
殴ってスッキリしたほうがいいよね?
/『後悔』5/15
隔てるものが何もない屋上は
青い空がよく映える
眼下に広がる町並みは
今日も大して変わらない風景が流れている
そう、変わらない
何も変わらないのだ
だから自分自身が変わることにした
邪魔をするものはなにもない
あとは、風に身を任せて
この何もない景色に一石を投じるだけ
/『風に身をまかせ』 5/14
ゆっくり
ずっと読めていなかった本を読みたい
あたたかな日差しがさす窓辺で
お気に入りのオレンジティーと
アールグレイのクッキーをかたわらに
/『おうち時間でやりたいこと』
あまいあまいチョコレート
食べると苦く感じてしまうなら
わたしは子どものままがいい
/05/12 『子どものままで』
あなたのことが大事だから
私は私を犠牲にしてまでも
尽くしてきたというのに。
あなたはそんなこと微塵も
気にすることはなく、
気がつくこともなく、
ただ厚意に甘えていた
私が甘やかしていたのだから
私が気づかせないようにしていたのだから
まさかそこまで尽くしているとは
思っていないだろう
だんだんと、それが当たり前になって
あなたはそれを当然のことだと受け入れ
甘やかしがワガママを冗長させた。
その頃にはもう
後戻りすることは出来ず、
私が唯一の望みを伝えると
あなたは困惑し私を訝しんだ
「当たり前」が崩れた瞬間だった。
これも愛の形
長年かけてひび割れを見過ごしていた
私自身への罰
私はあなたが幸せであれば
少しでもあなたの邪魔に
負担になるものを減らせたら
それでよかった
感謝されこそすれ
ひとつの望みで僻まれるとは
思いもよらなかった
あなたをすきなだけだったのに
/5/11 『愛を叫ぶ。』
あなたはわたしを守らなくてはいけない
窮屈でないようにやわらかなベッドに寝かせて
たっぷりの栄養とキレイな水を浴びせて
この美しい体を保たせなければならない
そうして緑の騎士に守られた姫は
硬く閉ざされた部屋の扉を開けて
空高く羽ばたいていくの
真っ白なドレスをはためかせながら
/『モンシロチョウ』
あなたがあの時、気軽に言った言葉
心に残って消えないの
忘れられない、いつまでも……。
/『忘れられない、いつまでも。』
一ヶ月先、なんなら三日先でさえ未来は分からないのに、一年後なんて思い描けるだろうか。
今まで思い描いた一年後なんて、自分の理想の高さに落ち込んでいたものだ。
簡単なことすら、結果的に自分を裏切ってしまうこともある。
誇りなんて殊勝なもの持ってなくてもいい。
一年後も、せめて、明日も生きられると思える自分でありますように。
/『一年後』
“それ”が“そう”だと気づいたのは、10年後だった
感情がこんなに入り乱れるのに
姿を見るだけで幸せになる
あの時は恋なんて知らなかった
誰かと結婚して、子どもの代わりに
あの世へ行ったと聞いた
もう会えない
どこかで生きているという希望も持てない
存在を失くしたことで気づいた
あれは恋をしていたのだと
恋だと分かっていたのなら
自分のものにすることもできたのに
/『初恋の日』
3日文まとめ上げPart2