もしも明日世界がなくなるとしたら
それでもぼくは、きみの幸せを願うよ
たとえぼくが世界の破滅を止められるとしても
きみの幸せ以上に大切なことなんてない
きみをしあわせに出来ない世界に
未練なんてない
たとえぼくも、この世界から消えたとしても
きみひとり、残すことになったとしても
/『明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。』
某ゲームを思い出したので。
春を告げる白の鳥と終わりを告げる黒の鳥。
あなたに出逢って、俺はあなたの凄さを目の当たりにした。
可愛さを目の当たりにした。
憧れていた頃より気さくで
画面の向こうにいた頃のように完璧で
初めて逢った時より案外間が抜けてて
思っていた以上に気配り屋で
ステージに立つと
がらりと変わる空気
劣化版と言われたのが腹の底から悔しかったけど
まだまだ敵わないのだと
思い知らされた
あなたと出逢ってから俺は
自分の底になかった感情を知った
/『君と出逢ってから、私は・・・』
『大地に寝転び雲が流れる』
家の裏手にある小高い丘。人があまり来なくなった展望台の奥。
他の木々に隠されるようにひっそりと立つ木の下で、目を閉じるのが俺の癒しだった。
そよそよとやわらかな風が頬を撫でる。
三寒四温を抜けた春の気候は、昼寝をするのにちょうどいい。
当たると暑いくらいの陽光は、こうして日陰に来てしまえば心地よい温度に変わる。
うつらうつらとしていると、展望台の方から幼い子どもの声が聞こえた。
「ねえ、お母さん!あれ、あれ見て!ソフトクリームみたい!」
「ふふ、本当ねえ」
「王子さまいるかな⁉」
「いるかな?いるかもね」
楽しそうな親子の声。親子が話しているのは、子どもたちに人気の幼児向けアニメだろう。
「ソフトン王子とクリーム姫は、いっしょにいるのかな?」「そうだといいねえ」
「こないだクリーム姫、ようかん国王にさらわれてたよ!」「そのあとソフトン王子が助けに来てくれたよね」
「あっ、そうだった!ソフトン王子、かっこよかったー!」
「きっと二人で仲良くおやつ食べてるよ。さ、私たちも帰ろう?帰っておやつ食べよう」
「たべるー!今日のおやつはなーに?」
母親が答える声が聞こえる。
楽しそうな声はどんどん遠ざかり、いつしか静けさが戻った。シーンとした空間になったと意識した瞬間。
腹の音が鳴った。
先程までアニメのキャラクターとはいえ、食べ物の話が聞こえていたからだろうか。
おやつの時間だと母親の言っていた言葉に腹が触発されたのか、一度空腹を自覚するとどんどん腹の音が鳴り始めた。
「腹減ったな……。帰るか」
主張の激しくなる腹を撫で、つむっていた目を開けた。広がる青空に、ソフトクリームみたいな雲ひとつ。
/5/4 『大地に寝転び雲が流れる・・・目を閉じると浮かんできたのはどんなお話?』王子の名前、うっかり別のピンク頭さんが浮かびそうでした。
『ありがとう』
あなたに感謝を伝えるのは恥ずかしいからと、ずっと言わずにいてしまいました。
思いはちゃんと告げなければ、ただの石になる。喉の奥に詰まってしまった、石ころに。
今日は言葉の代わりに花を贈ります
8本のピンクのバラを。
渡せなかった、あなたの墓前に
/5/3 『「ありがとう」そんな言葉を伝えたかった。その人のことを思い浮かべて、言葉を綴ってみて。』
三日もサボってしまった。まとめ上げする為、こちらは短めに。
カーテンを開けると、別の世界が広がるの。
こないだ読んだ本で見たような景色。
よく晴れた空。草原に渡る道。
白い囲いに赤い屋根のお家。お庭には大きな犬。
おかしいな。
少し前まで、ここは灰色の壁だったのに。
看護師さんは、良かったねと笑う。
やめて。惨めになるから、こんなことしないで。
/『優しくしないで』
『カラフル』
子どもたちのおえかきの時間、保育士はとある子どもの画用紙が気になった。
「それなにかな?」
子どもが描いていたのは、うさぎとくまと中央にかかる大きなカーブを描いた橋。
今日のテーマは『虹』で、確かに中央の橋は虹っぽいのだが、保育士の知っているカラーリングではなかった。
「にじだよ」
子どもは赤色のクレヨンで橋に色を塗っている。それは黄緑、茶色、白、ピンク、金、銀、水色の7色だった。黄緑の上に更に赤を塗ろうとしている。
「そっか、珍しい虹だね。先生の知ってる虹と違うけど、どうしてその色にしたの?」
「あのね、おかあさんがね、にじはねがいごとをかなえてくれるっていってたの。どんなねがいごとも、なないろでかなえてくれるんだって」
子どもはにこにこ言ったあと、顔を曇らせた。
「でもね、ぼくもね、おねがいしたんだけど、かなえてくれなかったの」
クレヨンを塗る手を止めて、子どもはうつむいた。
「おかあさん、しんじゃった」
保育士は去年の夏に、この子どもの母親の訃報を聞いたことを思い出した。保育士が何も言えずにいると、
「だからね、にじいろじゃないほかのいろもぬって、いろんないろでみんなのねがいをかなえてくれるようにするんだ!」
子どもが保育士を見上げて笑った。
「……そっか。たくさんねがいごとかなうといいね」
保育士は微笑み返して、子どもの頭を撫でた。
「虹」/『カラフル』
上げ損ね昨日分。
あなたがいれば そこが楽園
たとえそこが地獄でも
あなたには楽園しか似合わない
わたしのことを覚えていてくれさえすれば
それでいいの
あなたが楽園(そこ)にいるためならば
わたしは地獄の業火にさえ焼かれるわ
だからお願い
あなたの夢にわたしをいさせて
そこがわたしの楽園
/『楽園』
〜の扉が1/5くらい。逸れてしまった。
神の手から解き放たれて
ぼくは飛んでいく
行き先はわからない
風に乗って
風の向くまま
ぼくはどこへ行くのだろう
たどり着いた先に何があるのだろう
しばらく飛んでいくと
白いはこの中に足がついた
「あら、紙飛行機だわ
どこから飛んできたのかしら?」
窓辺に落ちた白い紙飛行機を女性は手に取った
/『風に乗って』
昨日分
見ているだけでよかったのに――
きみに、恋をしてしまった
下界の生活を覗いているだけでよかった
暮らしを眺めているだけでよかった
一言言葉を交わすだけでよかった
その内下界に下りるようになり
世間話をするようになり
きみが、私に恋をした
惹かれ合って、結ばれてしまった
私にとって刹那の時間
きみにとっての一生の時間
きみは、それでもいいと言った
私と共に過ごせるだけでいいと
『これはわたしのワガママだから』ときみは言ってくれた
はじめに我儘を言ったのは私だというのに
自分勝手なことだ
きみを私の理に縛りつけて
きみの魂を
何度生まれ変わっても
私に恋をするように、変えてしまった
これできみの何度でも巡る刹那は
永遠に私のものになった
永遠の刹那/『刹那』