魔法
うみのくさ(海草と)
しろいえきたい(牛の乳とを)
まぜあわせ
しろいむにむに(牛乳寒天)
まほーとおもう
君と見た虹
谷底で 君と見た虹 この胸に
雨は上がった 這い上がるんだ
夜空を駆ける
よ 夜中
ぞ ゾンビみたいにむくりと起き上がり
ら ラインに
を 思ってることを書いた 夜空を
か 駆け抜けて 届くだろう文字を思う
け ……結局送らない
る ルールは守ることにする
夜中に暗い話はしないこと
ひそかな想い
ひ 干からびそうだよ、とアイビー
そ そのとおりだ、とパキラ
か 枯れそうだよ、とアジアンタム
な 何で気づいてくれないの、
とポトス
お お水をください、とカジュマル
も もっと水やりの頻度をあげろ、
とモンステラ
い いつまで待てというのか
観葉植物たちのひそかな溜息
あなたは誰
【第1話 あなたは誰】
君枝は鏡台の前に座っている。女学校へは髪を三つ編みにして通うのだ。
艶やかな長い黒髪に白く透き通った肌、薔薇色の頬、桜色の唇、星のように輝く瞳を持つ16才の美少女、それが君枝だ。
「ぎゃああああ」
君枝は悲鳴をあげた。今、しわだらけの老婆が鏡に映った。
「あ、あ、あなたは誰なの!?」
また見てしまった。
ぼうぼうと伸びた白髪に深いしわの刻まれた肌。しなびた頬、かさついた唇、灰色の濁った瞳。それが君枝を鏡の中から見つめている。
心霊現象というやつか。
「美少女だから見るのかな」
だって、有名人ってみんなそんな話をしてるじゃない?だからこれから有名になろうとしている私も見てしまうのよ。そう思うことにした。
――また鏡を見てる。
「お義母さん、朝ご飯ですよ」
由香里は、義母で来月米寿を迎える君枝に呼びかけた。
【第2話 手紙の行方】
君枝は手紙を探している。
女優になりたいという夢や憧れを、便箋10枚に渡って綴った手紙である。手紙を書くのは苦手だけれど、一生懸命書いたのだ。そして奇跡のように美しく撮れた写真を数点。それらを入れた封筒はどこだ。封筒。封筒。
今頃合格なら連絡が来るはずなのに。なのに来ない。不合格だった?そんなはずはない。だってこんな美少女は、都会にだってそうそういないんだから。
だからそもそも手紙を出していないんだ。お母さん、私がオーディションを受けること反対してたもの。手紙を出したって嘘ついたのよ。
「手紙はどこへ行ったのよ!?」
君枝はゴミ箱をひっくり返した。
――また探し物してる。
「お義母さん、お昼ですよ」
由香里は、義母で認知症の兆しが見えつつある君枝に呼びかけた。