文化祭
最後のイベントとなるダンスパーティーが体育館で始まった。
彼氏彼女と躍る人。複数人の友達で踊る人。そこに私の姿はない。友達のいない私はこの瞬間をトイレの個室に閉じこもっていた。
ふいにノック音が聞こえ、鍵を閉めておいたはずのトイレのドアが開いた。
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今日は文化祭
生きていたら私も出たかったなぁと思いながら親友の姿を探す。いない。やっぱりなと思いつつ東校舎4階の人気の少ないトイレへむかう。
トイレ中だと行けないので一応ノックをしてから扉を開ける。もう死んでるから開けなくても入れるけど。
「私と踊りませんか?」
そう、声をかける。大好きな親友。愛している親友。
もっと長く生きられていたなら、もっと一緒にいれたなら。
そう思いながら私は彼女の手をそっと握った
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ドアの開いた瞬間に聞こえた。
「私とおどりませんか?」
そんな声が聞こえた気がした。空に飛び立った親友の姿が見えた気がした。
大好きだった。友達以上に。彼女のいない世界はどうしようもなく悲しくて寂しくて、今ここに彼女がいる気がして窓を開け、足を踏み出す。
空にいる彼女と踊るために
「ねえ、もしかしたらあの世でまた会えるかもよ」
そう笑って言った彼女は一体どこにいるのだろう。
月の綺麗なあの日、彼女の最後の言葉は「もう会いたくない。」そんな言葉だった。
来世でまた巡り会えたら、君と。
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「ねえ、もしかしたらあの世でまた会えるかもよ」
貴方と離れるのが辛くて、貴方の悲しそうな顔を見たくなくて放った一言。
言った後に気がついた。彼の人生はまだまだ長い。それを私に縛られて生きて欲しくはない。
私の命の灯火が消える直前、私は嘘をついた。
「もう会いたくない」
本当の気持ち。また巡り会えたら、貴方と。
あれは、1つ目の奇跡だった。
70億分の一の貴女と出会ったこと。
それは、2つ目の奇跡。
貴女のお腹に二人の生命が宿ったこと。
これは、最後の奇跡。
「行ってきます」と笑って言った貴女が「ただいま」を 言うことは二度となかったこと。
もし、神様がいるとするならば
奇跡を、もう一度
たまにはいいじゃない。 たそがれたって。
心も身体も疲れちゃってさ、でも友達がいないわけでも勉強ができない訳でもない。
だから簡単に疲れたなんて言えないんだよね。
たまには全部放り投げて一人電車に乗ってたそがれる旅に出るの。
明日も生きなきゃね
好きってさ、ひとりじゃ持ちきれないんだよね。
だから2人で持つの。
でもその相手は誰でもいいわけじゃなくてさ、
貴方にしか持てないんだ。